インスタで結果を出し続けるのはかんたんなことじゃない。なかなか発信できない、続かない、手応えがない。多くの美容師がどこかでつまずくSNSとの向き合い方を、どう乗り越えていくか。
特集を通して探ってきた『予約につながるインスタ』。その締めくくりは〈COA〉髙橋英昇さんと〈NEXT〉KUMAさんによる対談。投稿前の葛藤から、伸びないときの視点の変え方、リアルとのバランスをとる方法まで。次世代の声もまじえ、美容師にとってのSNS未来図を描く。

──ここまで4つの記事を通して「予約につながるインスタのつくり方」をまとめてきましたが、そもそもインスタの発信でつまづくポイントってどこにあると思いますか?

伸びるまでのメンタルじゃないですか?それが一番大事かなと思います

同じです。あとは投稿するまでのハードルだったり。「自分が満足いくクオリティじゃないから載せられない」って若手はけっこう多いと思います。僕としては7割ぐらいの完成度でもいいからまず投稿してほしくて。そういう時はまずやってみようよって話から始めます


──たしかに。自分ではまだまだだと思っていても、発信した瞬間に“これが自分のレベル”という見られ方になる。それを認めて発信するとなると、ためらってしまう人が多いのもうなづけます

そういう時は少し道筋を立ててあげることが大事で、その人が理想とするアカウントを教えてもらうんです。そこから「この人はこういう方向性がやりたいんだな」って見えてくる。
みんな見ているものとやりたいことがそれぞれ違うので、それを「これはこういう構成になってるよ」とか「実はプロフィールの設計が違うんだよ」とこっちで言語化して伝える。ある程度、方向性を導いてあげるとモチベーションも維持しやすいと思います

僕の場合は本人に「今の自分のインスタは何点だと思う?」って聞いてます。理想にしているアカウントの投稿を100点すると、本人の自己採点と大きいときは70点くらい差が出ることもあるんです。
その場合は投稿しなくていいから週2本動画を提出するみたいな行動目標を立てて、毎週10点ずつ点を上げていくイメージで差を縮めます


それいいですね。いきなり完璧を求めないで、投稿する習慣をつくる

投稿ができていて、それでも伸びない人は必ず原因があるんです。それが編集の質なのか、インプットの質なのか、単純にその努力量なのか。
例えばヘアアレンジの投稿をしているのに、全く違う自分が好きなコンテンツばかりふだん見ていると、どうしてもターゲット層が見たいものから段々ズレてくる。だから見るもののせめて半分は、自分のターゲット層が好きなコンテンツや編集を見てねって伝えています

具体的な行動の起こし方がすごい(笑)、もうやるかやらないかの状態ですね。そりゃ伸びますよ!うちは環境に依存してるところもちょっとあって。
上の立場のメンバーがまず発信して背中を見せるように徹底してるので、みんな“普段から投稿するのが普通”みたいな。やってない人が逆に目立ってしまう空気になってますね


その環境づくりも本当すごいと思います。やる気がある人だらけの環境だと、自然にみんなクオリティが上がっていきますよね。
僕の生徒さんには“SNSを頑張ってるのがサロンで自分だけ”という方も一定数います。サロンの中では一番取り組んでるけど、COAさんみたいな基準で考えるとまだまだだから、その感覚の違いはきちんと伝えてあげないといけない

──実際に若手のスタッフはどう感じているんでしょう。今回は〈COA〉のアシスタント・shionさんにきてもらいました。インスタグラムやTiktokが身近な環境で育った世代の声を聞いてみたいと思います

COAはいい意味ですごい自由にやらせていただけるので、スイッチが入ってる人ははめちゃくちゃやるし、やらない人はやらない。スタートするタイミングも人それぞれかもしれません

2002年生まれ、三重県出身。ル・トーア東亜美容専門学校を卒業後、新卒で〈COA〉に入社。現在アシスタント3年目、サロンオフィシャルアカウントの運用も担当する。仲の良さが伝わるコーデ紹介動画で注目を集め、日常で真似したくなるヘアアレンジ動画でもヒットを連発。数万〜数百万再生を記録し、若手ながら発信力でも注目を集める。

shionさんはCOAのなかでもめちゃくちゃSNSやる人。最初バズったのは、ファッションのリールだったよね

たまたま同じような投稿を見てて、「これやったら面白そう」と思って投稿したら反応が大きくて。でも入社前までは特に何もしていなくて、フォロワーも1000人ちょっとでした

すごい。「始めてみよう」という行動力がまず強みですよね。その後にヘアアレンジにシフトしたんですか?

最初に投稿してたのがヘアアレンジなんですけど、その時はあまり伸びてなくてお洋服と一緒に載せたらそっちが伸びたんです
──今はヘアアレンジがメインですよね。Tiktokは後から始めたんですか?

そうですね。基本はリール用に撮って、それをTikTokにも載せてます。でもTikTokとインスタって伸びるポイントが微妙に違うので、TikTokではテンポ重視で丁寧すぎない感じに再編集して投稿することもあります。インスタは情報性が強い方が伸びる印象です
──ヘアアレンジに限らず、リール動画はコンテンツで溢れているイメージがあります。他の人との違いについてはどう意識していますか?

見やすさは意識してますけど、最初から差別化とかを考えてつくっていたわけじゃないんです。だから「どうやったら伸びるの?」って同期や後輩からも聞かれる時も「まず毎日あげてみて」って答えます(笑)
結局、投稿しないと課題も分からないので。でも毎日投稿し続ければ習慣化して、コンテンツの差も自然に出てきます。もし1週間投稿して何も手応えがなければ、音やテンポ、文字の出し方を変えてみる。それを繰り返していれば必ず何か発見があります。

ほんとそう。でも続けるとなるとなかなか難しい。自分の色が見えてくるとモチベーションにもつながりますよね

──KUMAさんと英昇さんはInstagramが美容師の武器になり始めた頃から使っていると思いますが、当時と今で戦い方はどう変わりましたか?

特化型の台頭はもちろんなんですけど、僕は人柄を伝えるのが結構重要かなって。昔は商品(ヘアスタイル)を並べていればお客さまも集まってくれたけど、今は「応援したい」って思ってもらえるかがポイント。綺麗に整ったものはAIでも十分なので、何事も自分らしくブラッシュアップして表現しないとって思います

“ライバルが増えた後の戦い方”が問われています。インスタそのものは、もうだいぶ前からレッドオーシャン。その中で自分がどのジャンルで勝負しているのか、どれだけライバルがいるのかしっかり把握することが大事です。お客さまも選ぶ理由が多様化しているので、自分のターゲットを理解して、その層に合う伝え方をしている人ほど結果につながっています

──ここ1、2年で変わりそうなポイントや、注視していることってありますか?

やっぱり技術と人柄をどう伝えていくかが、これからもっと重要になると思います。技術レベルが高くても、そのクオリティを伝える力があるかどうかは別の話。
まだ技術が追いついていなくても、自分らしさを発信して応援されるような存在になれば、認知も広がるしモデルも呼びやすくなる。だからまずは継続して発信し続ける姿勢が大切なんです。続けることでブラッシュアップもできるし、自分が何を伝えたいのかも見えてくる。その差が数年後に大きく差になっていくと思います


英昇さんの通りだと思います。あとはちょっと賢くというか、しっかり考えられる人がより勝てる時代になってきた感じがします。見ている人の気持ちを考えられているか、サロンワーク中に汲み取ったお客さまの悩みや好きなものを自分の発信に落とし込めているか。サロンでリピート率が高い人ほどそういった癖がついていて、予約につながるし精度も上がっているイメージですね


リピート率ほんと大事です。これまでインスタの話をしてきましたけど、最終はやっぱりリアルな接客だったり技術が一番大事。SNSはあくまで手段にすぎないんだよって僕もよく話しています。
新規の方にちゃんと対応できなかったらクレームにつながるし、逆に関係性を築いてリアルな価値をサービスとして提供できればリピーターは増える。来てくれるのは当たり前じゃないし、そこで結果を出してこそ次につながりますからね

キャリアのフェーズによっても変わってきますよね。たとえばメンズ予約は前日か当日が圧倒的に多くて、ある程度顧客がいる人はそのための予約枠をセーブしておく必要があったりします。SNSで新規が増えるのはうれしい悲鳴ですが、顧客を失客しまっては本末転倒ですしね


僕も顧客専用のアカウントで予約優先枠を案内したりしています。あとはセミナー用のアカウントがあったりと、目的によって最近は使い分けてますね
──最後に、これからのSNSとの向き合い方を教えてください。

これだけ美容業界でSNS、SNS…って言われるのは、きちんと取り組めば数カ月でフォロワーが1000、2000と増えて、手元に入ってくるお金も2倍3倍としっかり反映される。そんな仕事って他にあまりないからだと思うんです。将来的にマネージャーやりたいとかサロンのバックオフィスで活躍したいなら無理にやる必要はない。でも、自分やりたいことの通過点にSNSがあると思うんだったら、継続して取り組む価値はあると思います


サロンという形に執着しない時代が来ています。外部の集客媒体を作り込むのではなく、美容師自身が技術と発信を両立して自立していく。そういうスタンダードをつくっていきたいなと思っています。
もちろんサロンのマーケティングも大事なんですけど、自分の発信でお客さんが来てくれたらシンプルに嬉しいし、自分のやってきたことに対してやりがいを感じられるじゃないですか。美容というジャンルは個人が持つ力がとても強いから、自分の存在価値を高めて、できることの幅を広げていけたらと考えています

- 執筆者
- 木村 麗音
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