hodosという思想 —— 美容師の“考え方“を育てる問い

hodosという思想 —— 美容師の“考え方“を育てる問い

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美容師として、技術だけでなく「どう考えるか」を問い直してきた〈hodos〉(ホドス)の山下純平さん。練習や営業に追われる毎日では、立ち止まって考える余裕はなかなかない。だからこそ問いに向き合うことが、美容師にとって欠かせないと山下さんは語る。

連載「hodosという思想」では、読書や経験から培った思考の習慣を手がかりに、サロンワークや生き方を見直すヒントを全3回にわたって綴っていく。

山下純平  @yamashita_hodos 1986年千葉県生まれ。日本美容専門学校卒業。都内サロンを経て2014年に渋谷〈nanuk〉のオープニングスタッフとして参加。ディレクターを務めたのち独立し、2021年に南青山で〈hodos〉をスタート。現在は〈hodos ephemera〉〈hodos Experiment〉と合わせ3店舗を手がけ、感度の高いデザインワークで注目を集める。

はじめまして、hodos代表ヤマシタです。まず初めに、読書好きという趣味が高じてコラムのオファーをいただけたことに感謝しています。私の知見がみなさまの美容人生に役立てば幸いです。

私はSNSやテレビよりも、本を読む時間が好きです。なぜなら本は、自分の人生ですぐに活かせてていちばんリアルで面白いから。学んだことの中から何を選び、どう意思決定するか。その積み重ねが、自分自身のストーリーになることが何より楽しい。この連載を読んで「自分の人生でも試してみたい」と感じていただけたら本望です。

自分のことを話します。幼少期から大学までサッカーを続けていました。サブカルや洋楽、ファッション、旅行にも時間を費やしました。そして夢はサッカー選手から美容師へ。東京への憧れは不思議と強くはなかったけれど、世界とつながる場所で挑戦したい気持ちは昔から変わらなかった。夢を追うこと自体が、ずっと自分を動かしてきた原動力です。

渋谷で美容師デビューし、良い先輩に出会えて無事スタイリストに。アシスタントリーダー、店長、ディレクターというポジションを経験し、フリーランスを経てhodosを立ち上げました。現在は東京・青山に3店舗。一言でいえば感謝しかないです。ここまで来られたのは、自分ひとりの力ではない。

人と同じではつまらない。考え方も、勉強の仕方も、生活も自分なりに選びたい。仲間と過ごす時間も好きですが、孤独でいることに心地よさを感じます。双子ということもあり、昔から一緒にされることが多く嫌でした。

アシスタント時代は睡眠を削って、芸を磨くためにひとりで夜遊び。スタイリストになってからは、術を身につけるために予定を捨てて、休日撮影や夜練習に打ち込みました。そうして選んできたひとりの時間が、今の自分を形づくっています。

経営者になる前から本格的に読書を始め、月に1冊のペースで読み続けてきました。いまは気になる本を何冊かまとめて買い、常に読みたい本がある状態です。ちなみに私は紙派です。理由は汚せるから。メモ、折り目、コーヒーのシミ、読みすぎてよれた跡。デジタルにはないこの痕跡が、自分の記憶に染み付くのでおすすめです。

ひとりで過ごす時間が自分を成長させます。まずは意識的にひとり時間をつくりましょう。スマホは伏せて2メートル離す。そして、自分の頭と対話する。独り言もしたほうがいい。そんな小さな習慣から、考え方は磨かれていきます。

読書も同じです。本を開けば、今の人生に必要な言葉と出会えます。断捨離やスマホのアップデートのように、不要な考えを手放し、本当に必要が考えを残していく。その繰り返しが、自分を進化させる言葉になります。

どう生きたいか。それが、いま私の問いです。

これまでの美容師人生には、何度も障壁がありました。諦めたくない。その思いから、技術だけでなく“思考“を成長させる勉強を続けてきました。意識だけでは変わらないからです。

「美容師になる」という願いが叶い、「東京に自分の店を持つ」という願いも叶った。普通の大学生だった自分が、何を学び、何に気づき、どう成長してきたのか。その過程で、お客さまや仲間から信頼を得られるようになったのは、技術の積み重ねだけでなく、思考を磨いてきたからだと思います。

前例の無いビジネスモデル、経営、組織づくり。そしてプロダクトの細部にまでこだわりって運営する。差別化は細部に宿して勝負。

目指すのは「日本を世界一スマートにすること」。技術、哲学、思想。それらを世界に伝える為に美容師をしているhodosヤマシタです。長くなりましたが自己紹介はここまで。よろしくお願いします!

思想の根源は、自分への問い。

審美の追求は、センス(アウトプット)を磨くこと。

哲学を持ち、言葉を学ぶ。

これらをまとめて「hodos思想」とします。

やるべきことはシンプル。

考え方(哲学)を変える。言葉を変える。


だから僕はhodosの仲間に日々、自分自身について考えてもらえるように接しています。技術や一般的なことも必要ですが、それ以上に大切なのは自分の中に哲学を持つこと。情報過多な時代だからこそ、答えは自分の中にしかありません。学びは、自分との対話をすること。

時代の流れが早いなら、あえて乗らない。時を少し止めて、自分だけの“精神と時の部屋”に入ってみる。そこにこそ、新しい自分と出会えるはずです。

私は、「男らしく優しく強く生きたい」というコンセプトを持っています。笑 ブレない大人になりたいから。

ここでみなさんに10の問いを投げかけます。

・平坦が好き?自分の人生、よく考えてる?
→リスク(冒険)なくフラットな人生が目標なのか

・人に生まれて感謝。時間(命)を大切に生きてる?
→時間は命、機会は一瞬

・“人は人、自分は自分”で生きられている?
→誰かの真似、誰かを羨む、自分とは

・勉強したことは自分の人生で実践してる?
→読んで終わらない

・嫌われる、危険かも。それが個性。出せてる?
→個性はあるよ

・勇気を出せば大体やれる。勇気出せてる?
→運をつかむのも勇気

・自分の審美を追求できてる?
→美容師だから

・「なりたい」よりも「どう生きるか」考えてみた?
→大体のことはなれる。で、どう生きるか。

・自分との約束を果たせてる?
→俺はやる、諦めない

・自己保身してないか?
→まだ変化していきたい

考え方(哲学)が変わると何が起こるか

哲学を学んで気づいたのは、哲学とは「真理を考察して論理的思考を育てること」だということ。私なりに言い換えるなら、“心に留めておくブレない考え”を持つことです。

世の中には原理原則が存在します。それに気付かないまま無視して、悩んだり落ち込んだりしてきました。相手や環境は変えられない。変われるのは自分だけ。だからこそ、まず自分を変えていく。そんな時に役立つのが哲学です。

実は、そんなに悩まなくてよかったり、そんなに悪く捉える必要はない。そもそも、それは自分の課題ではないかもしれない。まだ使ったことの無い考え方に触れられるのは、とても面白い体験です。自分の人生が一気に加速していく感覚がある。ただ、人は元の考え方に戻りやすくもあるから、哲学を学ぶことで整理できます。

自分で考えられる人間になるために。

自分に起きた出来事や、もやもやする言葉。その文末を「?」に変えてみてください。問いに変わるだけで、考えは深まります。まさに深化(進化)していきましょう。

壁→問い→仮説→実行。
このプロセスの中で“問い”の部分を進化させます。マイナスに聞こえた言葉も、プラスに視点を変えて「?」をつけてみる。

例えば、「先輩にいろいろ言われることが多い」。

マイナスな考え方→先輩と合わないな。

プラスな考え方→これが社会常識なら、学ぶしかない?

少し無理があるかと思うくらいの角度でプラスに捉えて「?」をつける。そうすると、自分との対話が自然に始まります。

これはひとつの思考技術です。最初は違和感があるかもしれませんが、癖づけばストレスフリーになっていきます。もちろん怒ることも自然な感情なので大切。言い返すのもOK。でも、さらに進化したいと思ったら、ぜひ試してみてください。

壁は、実は成長に必要なものかもしれない。自分ひとりで解決できることが増え理想が明確になり、勇気が出てくる。やりたくないことも、やりたいこともはっきりしてくると、余計な時間が削ぎ落とされます。それはとても嬉しいこと。

学びは、自分で考えて、自分で設問をつくること。いまの自分に必要なことは、自然と行動に反映されていくので面白い。(と信じてるので学べています)

次回「言葉を学ぶ」に続きます。

木村 麗音
執筆者
木村 麗音

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