“Z世代”じゃ括れない。2000年生まれの美容師たちが、いま考えていること。

“Z世代”じゃ括れない。2000年生まれの美容師たちが、いま考えていること。

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2000年生まれの美容師たちによる「00line CREATORS」特別編

photo_佐野一樹(chiyoda-studio)

2000年⽣まれの美容師たちは、いま何を考え、どんな道を歩んでいるのか?それぞれ異なるフィールドで活躍する同世代の3⼈が集まり、それぞれのキャリア観や挑戦、未来について語り合った。

Z世代と呼ばれることへの実感、技術と集客のバランス、働き⽅の選択肢——。「今の⾃分たちのリアル」を率直に共有して、若⼿美容師が感じる本⾳と、これからのヒントを探る。

左)室 優菜(ADITION)/SNSを駆使しフォロワーを多数抱える
中)⼯藤 舞(LECO)/数々のコンテストで受賞歴を持つ
右)AYATO(Null)/サロンのファウンダーとして教育にも注⼒

編集部

せっかくなので、まずはお互いの印象から聞いてみたいと思います。

工藤舞

ムロちゃん(室 優菜)とは友人を通じてすでに知り合いでした。AYATOくんは今日が初対面で、ちょっと緊張してます。

室優菜

ふたりともそっぽ向いてたもんね(笑)

工藤舞

どうしよう…! ってなった(笑)。インスタも見てたし、技術が上手いのも知ってたけど、実際に話すのは初めてだからちょっと遠い存在に感じてたかも。

AYATO

舞ちゃんはコンテストで名前をよく見てました。それこそインスタでも流れてくるし「このスタイル、舞ちゃんっぽいな」って思ったらやっぱりそうだった、みたいなことが何回もあって。スタイルそのものが個性として確立されてる。

室優菜

わかる。私も舞ちゃんのスタイリスト試験のスタイルを見て惚れた。世界観が確立されていてカッコイイって、今でも覚えてるよ。
AYATOは、私が上京して最初に入ったサロンの先輩で、さん付けで呼んでたくらい。「同い年でここまでやれる人いるんだ」って、けっこう衝撃だった。

スタイリスト昇格試験のクリエイション(工藤 舞)
工藤舞

私はSNSがあんまり得意じゃないから、ムロちゃんみたいに自分らしさを発信ができるのは本当に尊敬する。お客さん、ムロちゃんの画像持ってくること多いんです(笑)

AYATO

ふたりともすごいのは、自分の強みをちゃんと持ってるところですよね。舞ちゃんはヘアデザインそのもので、ムロちゃんは発信力で、それぞれ存在感がある。

工藤舞

AYATOくんはカラーがめちゃくちゃ綺麗なのもそうだけど、同世代でマネージャーっていう立場なのもすごい。

AYATO

サロン全体でどうブランディングしていくかとか、スタッフの教育とか、そういうところも自分の仕事の一部になってるから。もちろん、技術を突き詰めるのも楽しいけど、それ以上にチームとしての強さも考えているかもしれない。


2000年生まれの美容師ってどんな世代?


編集部

2000年生まれの美容師の特徴ってなんだと思いますか?

Ayato

良くも悪くも僕らの世代は、いろんな特化型が出揃った状態でデビューしているんですよね。ブリーチもカットも、どれもすでに確立されていて、何を武器にするかを考えないと埋もれてしまう。自分が何者なのか、しっかり理解して発信していかないといけないと思う。

工藤舞

サロンの中だけでも「レイヤーならこの人」「デザインカラーならこの人」って、ポジションがすでにできている状態だよね。私もレイヤーやハイトーンが好きだけど、人と同じことをしてるだけじゃダメで、いかに自分を知ってもらうかが重要だなと実感してます。


ソーシャルネイティブだからこその課題


室優菜

私は逆に、先にSNSでバズってしまったので、美容師としての自分を知ってもらうのが難しかった。デビューしてもすぐにお客さんに繋がるわけじゃなくて。

編集部

ムロさんクラスのフォロワー数がいても、そうなるんですね。

室優菜

そうなんですよ。いさなさん(共同代表)もTikTokでバズって今のポジションを作った人なので「まあ、そうなるよな」って言われて(笑)そこから美容師としての軸を一緒に考えてくれて、今のスタイルになった感じ。発信力が自分の武器だけど、美容師としてのバランスをミスると一気に崩れる怖さもあります。

工藤舞

ムロちゃんがデビューした時、「明日からお客さんやばいんだろうな」って思ってた。でも今の話を聞いて、私が考えている以上に難しいことなんだなって感じました。逆にそこが親近感というか、みんな同じような悩みを抱えてるんだなって。

AYATO

手段は違っても、やってることの本質は同じですよね。技術を磨くことも、発信を頑張ることも、「自分の美容師としての価値を伝える」っていう意味では繋がってる。だからこそ、自分の強みをちゃんと理解して、どう活かすかが大事なのかも。


コロナでも止まらなかった3人の選択


編集部

ちょうど美容学生の2年目に差し掛かるタイミングで、コロナ禍がありましたよね。何してましたか?

室優菜

私は大阪にいて、学校が完全にストップしました。それで時間があったので、「じゃあTikTokやろう!」って、友達と始めたのがきっかけです。

現在、InstagramとTikTok合わせ30万フォロワーを超える(Instagramの投稿/室優菜)
AYATO

僕はもともと自分を表に出すのがあまり得意じゃなかったので、逆にSNSを捨てて、ウィッグやモデルをひたすらやってました。

室優菜

それ思った。東京に出てきたとき、デビューする前から完成してる人が多かったんですよ。アシスタントなのにカラーできるの?みたいな。スタイリスト級のクオリティを学生のうちから持ってる人がゴロゴロいるなって感じました。

AYATO

美容室でバイトしてたから、そこで教えてもらったり、月1で東京に来るようにしてましたね。関西にいると、東京のサロンに頻繁に通うのは難しくて、1回のチャンスが大事でした。キャリーにウィッグだけ詰めて、サロンに行って髪をやってもらって、終わったらそのサロンにまた戻ってウィッグで教えてもらって…友達の家に泊まって始発で帰る、みたいな。

編集部

すごい…。工藤さんはどうでした?

工藤舞

さすがにこの後は(笑)。私も月1でLECOに通ったり、雑誌やピンタレストで素材を集めたり。LECOにクリエイティブ試験があるって知ってたので、「そこまでいったらこういう作品を作りたいな」って、雑誌を見ながらイメージを膨らませる時間にはなってました。


選択肢の広さと、自由のむずかしさ


編集部

自分たちが「恵まれているな」って感じるところは?

AYATO

Nullは雇用とフリーランスのハイブリッドな働き方で、サロンに所属しながら個人の活動も自由に伸ばせる環境です。でも、ただ自由なわけじゃなくて、自分で考えて動かないと何も始まらない。そういう意味では、自立していないと難しい環境かもしれないですね。

Nullとして上海でセミナーを開催(AYATO)
室優菜

うちは何か新しいことに挑戦したいと言ったら、すぐに道筋をつくってくれるのが大きい。共同代表の大石さんといさなさんが業界で信頼されているからこそ、持ってきてもらえるチャンスの質が高いんだと思う。

工藤舞

それ、めちゃくちゃ大きいよね。LECOもクリエイティブな環境が整っていて、コンテストの相談をしたら先輩たちが「ここもっとこうしたら?」って具体的にフィードバックをくれる。でも「言ったら答えになっちゃうから」って、あえて言わないこともある(笑)

AYATO

考えさせるスタイル。でも、そのほうが力になる。

編集部

それぞれ環境は違うけど、みんな自分の強みを活かしながら挑戦してますよね。

AYATO

そういう意味では、舞ちゃんがコンテストで結果を出してるのは本当にすごいなと思います。僕は逆に出たことがない。挑戦した方が得るものが多いのはわかってるからこそ、これからしっかり準備して挑戦してみたい。

工藤舞

でも、私がコンテストに出てたのって、名前も知られてない存在だったからなんですよ。多分ふたりが出るのとは、プレッシャーの種類が違うと思う。私は「今から知ってもらいに行く!」っていう気持ちだったから、怖いって思わなかった。やらないと何も始まらないし、結果的に私の名前を知ってもらうきっかけにもなったので。

「DA next 2024」でジャパングランプリを受賞(工藤 舞)
室優菜

それぞれが自分の道を見つけてるのが、私たちの世代っぽい気がする。学ぶことは多いけど、選択肢も広い。先輩たちが特化型を開拓してくれたおかげで、進む方向を自分で決めやすいのかも。

AYATO

ただその分、自分で決める力が必要になるから、サロンの環境も大事だけど、最後は「自分がどう動くか」に尽きると思います。


主役はあくまで顧客
5年後、どうなっていたい?


編集部

よく「Z世代」と括られることについては、どう思いますか?

工藤舞

α世代だと思ってました(笑)。Z世代と呼ばれていた先輩たちはどちらかというとペールトーンが多くて、私たち以降の世代はよりバキッとした色味を出す人が増えた印象があって。それをアシスタントの時に見ていたので、違う世代なんだと思ってました。

AYATO

あまり気にしてないというか……。僕らにとって主役はお客さんなので、美容師側がどうカテゴライズされるかは、そこまで意識してないかも。


5年後、30歳になったとき、どうなっていたいですか?


室優菜

海外にも挑戦してみようと思っていて、30歳までには向こうでもしっかり自分のポジションを確立したいですね。やりたいことが多すぎるので、20代のうちに全部トライして、そこから少しずつ絞っていけたらと思っています。

工藤舞

5年経っても、今の勢いは止めたくないです。サロンワークも外部の仕事もバリバリ挑戦していきたい。今年は「NUEN(ヌエン)」という新しいブランドができるんです。自分も店舗を任されるような存在になれたらと思っています。

AYATO

僕は自分のサロンを出したいですね。もちろんNullとして、新しいブランドを立ち上げる形で。これはもう5年後とはいわず、27歳くらいで実現したいと思っています。

木村 麗音
執筆者
木村 麗音

日本美容専門学校を卒業後、都内ヘアサロンを経てキャリア転換。少年ジャンプ編集部で3年編集アシスタントを務めた後、髪書房に入社。ウェブメディア「ボブログ」の編集を担当。

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