『Aelium』色彩と質感で魅せる、新時代のマレット〈LECO〉工藤舞

『Aelium』色彩と質感で魅せる、新時代のマレット〈LECO〉工藤舞

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2000年度生まれの美容師たちによるクリエイション「00line CREATORS」#1
photo_佐野一樹(chiyoda-studio)

いつの時代も、新しいムーブメントを生み出すのは“若い力”だ。いま、注目すべきは2000年度生まれの美容師たち。コロナ禍を経験し、SNSとともに成長してきた彼らにとって、トレンドは待つものではなく、自ら発信し、つくるもの。アシスタント時代にはハイトーンブームが到来し、ヘアはよりパーソナルで、自由な自己表現だと知っている。

その感覚はサロンワークにとどまらず、コンテスト、SNS、教育、クリエイションへと広がっている。今回は同世代で頭角を現す3人の美容師が、今の空気をヘアに落とし込む。最初のピースを飾るのは、〈LECO〉工藤舞さん。数々のコンテストで受賞を重ねてきた彼女の、クリエイションに迫る。

工藤 舞(くどう まい)/2000年生まれ、東京都出身。国際文化理容美容専門学校・渋谷校を卒業後、新卒でLECOに入社。第2回「スターアワード」で当時アシスタントながら準優勝を獲得。2024年1月にスタイリストデビューすると同年、U-30のトップ美容師が競う「DA-NEXT」(ミルボン)と「CHANGE YOUR LIFE!」(ガモウ)で連続優勝を果たした。

『Aelium(アエリウム)』は、シャネルの2025年春夏コレクション「飛翔の物語」から着想を得て生まれた造語。軽やかさ、自由、そして挑戦の象徴として、新たな境地を切り拓く意志を込めた。

レングスに大胆なコントラストを効かせたマレットヘアをベースに、軽やかな質感をプラス。根元のペールパープルから毛先のブルーへと溶けるグラデーションに、密かに仕込んだローライトが個性を際立たせる。

ディズニー作品の“ラーヤと竜の王国”に登場する“シスー”を裏テーマにしています。やわらかい毛並みとパステルカラーの幻想的な雰囲気を、ヘアで表現しました」(工藤)

🅀 今回のデザインのこだわりは?

レイヤーが定番化する中で、「もっと新しい表現があるはず」と思い、マレットウルフを選びました。ただ、シャギーには寄せず、クセ毛を活かしたナチュラルな質感に。カラーは、“シスー”の毛並みのように、根元の淡いパープルから毛先のブルーへと溶けるグラデーション。ローライトを忍ばせることで、幻想的で奥行きのある仕上がりを目指しました。

🅀 クリエイションの着想はどこから得ている?

まずはモデルさんの雰囲気や髪質、履歴を見て「この人ならどんなスタイルが似合うか?」と考えるところから始めます。今回も、モデルさんのクセ毛とセルフカラーの残留を活かせる形を模索して、マレットウルフにつながりました。

「Aelium」のヘアデッサン

それと、作品には必ず裏テーマを持たせるようにしています。LECOでも「バックボーンのあるデザインに深みが生まれる」と教わってきたので、単に“可愛い”ではなく、どこかに軸を持たせることが大事。今回はシスーをイメージしましたが、最初から決めるわけではなく、作りたいスタイルの方向性を固めたあとに、それに合うモチーフを探していくことが多いですね。

🅀 コンテストの経験は、サロンワークにどう影響してる?

「コンテストはサロンワークの延長線上」と先輩たちがよく言うんですけど、その意味を実感できるようになりました。DA-NEXTに出場したのも、ミディアム・ロングのデザインをもっと深く追求したかったから。技術をゼロから見直し、先輩のフィードバックを受けながら精度を上げることで、サロンワークにも自然と反映できています。LECOに来るお客さまは個性を大切にしている方が多いので、コンテストで培ったクリエイションがそのまま提案につながることも多いですね。

DA-NEXT2024「ミディアム・ロング部門」でジャパングランプリを受賞した際の作品

🅀 最後に、今の目標は?

まずは、去年よりもっとたくさんのお客さまに来てもらえるように、サロンワークを頑張りたいです。今年は特に、そこを大事にしたいなって思っていて。SNSを通じて自分を知ってもらいながら、サロンで直接お客さまと向き合う時間を増やしたいです。 でも、やっぱりコンテストも続けていきたいです。去年、学びが多かったし、そこで得たものが今の自分につながっているから。今年も挑戦しながら、新しいデザインや技術にもっと向き合っていきたいなって思っています。サロンワークも、コンテストも、どっちも全力でやりたいですね。

木村 麗音
執筆者
木村 麗音

日本美容専門学校を卒業後、都内ヘアサロンを経てキャリア転換。少年ジャンプ編集部で3年編集アシスタントを務める。その後、髪書房に入社しウェブメディア「ボブログ」の編集を担当。

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