ストリートファイター「ガイル」の髪型を完全再現 ─ さとけんが挑む、プロ本気の遊び心

ストリートファイター「ガイル」の髪型を完全再現 ─ さとけんが挑む、プロ本気の遊び心

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photo:シミズエリオ

ユーチューブや美容師として活躍中の“さとけん”さん(佐藤健一)。キャラクターのヘアスタイルをウイッグで再現する動画が話題を呼び、現在チャンネル登録者数は13万人を超える(2024年12月現在)。その驚異的な再現度から、大手ゲーム会社からの依頼も受けるほど。今回は彼の制作現場に潜入し、その裏側と美容師としてのこだわりを紐解いた。

さとけん /
Profile
さとけん

佐藤健一(さとう・けんいち)1988年生まれ、新潟県出身。美容学校を卒業後、新潟市のサロン「SNIPS」で3年間アシスタントを経験し、上京後すぐにスタイリストとしてデビュー。2022年に「CUTLINE」をオープンし、サロンワークと並行して動画制作に励む。現在のチャンネル登録者数は13万人(2024年10月現在)。

テーマ〈ガイルヘア〉

ストリートファイター6 ©CAPCOM

今回挑戦するのは、格闘ゲーム『ストリートファイター』のキャラクター“ガイル”。ガイルの魅力は、トップに向かって劇的に立ち上がるヘアと、フラットに整えられたカットライン。ウイッグの毛量だけでは再現が難しいため、まずは毛束を追加していくところからスタートする。

準備〜仕込み

使うのは、「クラッセプロ(CLASSE.PRO)」ファイバータイプの毛束

毛束を取り付けると、まるで歯ブラシのような密度に。ここからはトップに向けて髪全体を立ち上げていく。

使うのは強いホールド力が自慢のY.S.PARK「クレイジーミスト」(写真左)。柳谷「J ウルトラハードジェル」(写真右)は仕上げに使う。

立ち上げ方は、①パネルを上に持ち「クレイジーミスト」を吹き付け、②ドライヤーで水分を飛ばす。これをひたすら繰り返す。

カット

髪全体が立ち上がった状態。朝10時にスタートして、すべてが終わったのは夜20時過ぎ。クレイジーミストを4本使い切り、10時間かけて準備が整う。ここからは、トリッパーを使ってフラットなカットラインを仕上げていく。ダイジェストムービーで、そのプロセスをお届け。

より詳しい制作工程は、本編をチェック


インタビュー

ここからは、美容師とユーチューブ活動の二足のわらじを履くさとけんさんに、その活動と彼の美容師としてのスタンスについてインタビュー。プロフェッショナルとしての視点と、彼が大切にするこだわりに迫る。

──ウイッグ制作を始めたきっかけを教えてください

きっかけはコロナ禍に同僚から『やってみたら?』と勧められて。で、『鬼滅の刃』の善逸のヘアをつくったんです。それから他のキャラクターにも挑戦していくうちに視聴回数が伸びて、視聴者さんにはプロの本気でやる“悪ふざけ”を楽しんでもらってる感覚ですね。技術や工夫を詰め込んで、制作過程ごと楽しんでもらえたらと思ってやってます。

──つくる上でのこだわりは?

360度どこから見てもそのキャラクターに見えるように作ることですかね。特定のアングルだけじゃなく、実際にキャラクターが存在しているような再現度を目指してます。

プロセスでいうと、まず頭の中で展開図を描いて構造をしっかり把握してから作ります。この工程を考えずに作ってしまうと、事故っちゃうことがあるので。重要なのがブロッキングで、これがうまくいけば少々雑に毛束を作ってもバランスが良く見えます。

またひとつの縛りとして、美容技術を活かしてなるべく1つのウイッグで仕上げるようにしてます。たとえば、髪色が左右で違うキャラクターでも、異なる色のウイッグを組み合わせるのではなく、あくまで1つのウイッグを染めて作るようにしてます。

──いちばん難しいところは?

難しいというより、地道な作業が多いんですよ。たとえば、髪の毛を縫ったり足したりする工程は、正直、修行みたいな感じです(笑)。形を作るのは楽しいんですけど、そこに至るまでがね。あとは、妥協しないことが大事。時間がかかっても、最終的に自分が満足できるものを作りたいですね。

──そのモチベーションはどう保つんですか?

これは難しいところですね(笑)。特に毛束を足す作業や細かい部分は「修行」みたいな感覚で、正直あまりやりたくない部分もあります。でも、完成が近づくとやっぱり楽しいんですよね。作りたいと思う髪型があったとき、その発見や挑戦が一番のモチベーションじゃないですか。

──サロンワークとユーチューブ活動、どちらがメインですか?

どちらも楽しいんですが、メインは完全にサロンワークですね。ユーチューブは趣味の延長でやっている感じなので、そこまで「仕事」として意識していない部分が大きいです。お客さまのヘアを仕上げるときも、ユーチューブ動画を作るときも、いつも「①考えて工夫すること」と「②それを言うか言わないか」の2つを意識してます。お客さまには、「こうしたらもっと良くなるかな」と考えながら施術しますが、あえて伝えないこともあります。その人の性格や雰囲気に合わせて、「なんか良い感じにしておきますね」くらいで済ませることもあります

──いつか作ってみたいキャラクターは?

いつか「ハンターハンター(HUNTER×HUNTER)」の“ゴンさん”を作ってみたいですね。パスタぐらい太い毛が必要らしく、あの髪型の再現はかなりの挑戦になると思います。実際にウイッグメーカーに問い合わせたら、繊維状の毛束なら5メートルでも10メートルでも用意できるとは言われて。でも一番の問題はその高さをどこで作るんだって話ですね(笑)。ヤンキー映画に出てくるような倉庫あるじゃないですか、ああいったところ借りてやってみたいです。いつか挑戦したいプロジェクトですね。

──最後に。今後の展望は?

2月にはサロンの移転を予定していて、今より広いところで、もっとクリエイティブなことができる環境に移りたいと考えてます。動画制作も続けますが、やっぱり本業は美容師としてお客さまの髪を切ること。それが一番楽しいし、自分にとって大切なことですね。ユーチューブの方も、無理に更新せず、やりたいことを自由に続けていくつもりです。

ボブログ編集部
執筆者
ボブログ編集部

成長し続ける美容師のための髪書房ウェブメディア『ボブログ』。これまでにないスピードで変革する時代に必要な情報【パラダイムシフトの芽】をいち早く見つけ、掘り下げ、新しい常識を提案します。

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