【ブリーチ】【ライトナー】【クリア剤】【新システム】ベストな「抜き方」比較表 2024年版
明度をコントロールするための薬剤も手法も広がった今、新しい「ものさし」が必要では?! ユーレルム(U-REALM) 福永圭祐さんと緊急実験。
写真:山﨑美津留
サムネイル:トカジショウタ(SHEER FILM)
明度を上げるための手法は、客層や求めるヘアデザインによってまちまち。ブリーチ、ライトナー、クリア剤、今年発売になったばかりの新システム。いろいろあるけど、「どんなときに」「何を」「どう使う」べき?
レベルスケールをつくると
薬剤選定は迷わない
今回、ユーレルム(U-REALM)福永圭祐さんがつくったのは「脱染・脱色のための新指標=レベルスケール」。
ダメージレベルやサロンでのアシスタントへの任せやすさも一目瞭然の表にしました!
──ブリーチ、縮毛矯正、髪質改善など履歴が複雑化している今、薬剤選定のジャッジは非常に難しいですよね?
何を使えば、求める明度の到達地点へいけるのか、ダメージを軽減しながら要望を叶えられるのか、明るくしながら髪の体力を奪わない方法を僕自身も模索し続けてきました。
その中で僕が見つけた「指標」を公開したいと思います。
レベルスケールを自分でつくると「薬剤選定に迷いがなくなる」と福永さん。
本記事を参考にぜひ、自身でレベルスケールをつくってみることをオススメします!
準備するもの
目的は「どの薬剤が一番明るくなるか」を競うことではなく、「正しくメラニン色素を削って、髪の体力を残したベースをつくる」こと。
脱染・脱色の「考え方」をおさらいしつつ、知識をバージョンアップしておきましょう!
「リフト力」と「髪の体力」を比較
脱染・脱色 30分放置
5Lvの毛束にそれぞれ以下を塗布し、30分放置。
・ブリーチ(OX6%)
・ブリーチ(OX3%)
・ブリーチ:ライトナー=1:1(OX6%)
・ブリーチ:クリア=1:1(OX4.5%)
・イルミナ ライトニングシステム(OX3%)
30分後、明度は以下のように差が出ました。
30分放置だと、それほど差が出にくい前提で比較しました。
・ブリーチ:ライトナー=1:1は、ブリーチ単品(OX3%)より少しだけ明度が下がります。
・「イルミナ ライトニングシステム」は30分放置だとライトナー単品より明るく、「ブリーチ:クリア=1:1」と同等くらいの明るさ。明るくなりすぎず、ブリーチより「やさしい」といった特徴があります。
脱染・脱色 60分放置
同じ配合で60分放置も比較。明度の高い順に並べると、60分放置では2番目に明度が高いのは「ブリーチ:ライトナー」に。
60分置くと、だいぶ差が出てきますね。
・60分放置では、「ブリーチ(OX3%)」と「ブリーチ:ライトナー=1:1(OX3%)」の明度が入れ変わる結果に。
・「ブリーチ:ライトナー」は「ブリーチ単品」にOXを3%にして2剤で操作するよりも、初速がゆっくり上がり、60分おけばしっかり抜けてくれることがわかります。ライトナーが混ざっている分、操作性も高く、アシスタントも施術しやすいと思います。
・「ブリーチ:クリア=1:1」と「イルミナ ライトニングシステム」は60分放置でも同等の明るさになりました。
──髪の体力が残っているのはどの配合ですか?
髪の体力が残っているのは「ブリーチ:クリア=1:1」と「イルミナ ライトニングシステム」です。
特に「イルミナ ライトニングシステム」は、オンカラーのイルミナカラーにオレンジ味を抑える力があるので、透明感を出しながら、ブリーチほど負担がないのが、高明度すぎないヘアカラーを求める層に響くと思いますね。
「30分放置」と「60放置」の比較
「30分放置」と「60分放置」の毛束を並べてみました。次はオンカラーを行います!
オンカラー後はどう変わる?
オンカラーは「脱染・脱色 60分放置」の毛束に「10Lvのアッシュ系」のカラー剤を塗布しました。
・まず、ブリーチ単品(OX6%)のオンカラー後は明度はアップしていますが、他の毛束に比べて毛束の毛量が減っており、60分放置すると断毛してしまうことがわかります。
・「ブリーチ単品(OX3%)」と「ブリーチ:ライトナー1:1」を比較すると、やや「ブリーチ:ライトナー1:1」が明るい。
・「ブリーチ:クリア=1:1」「イルミナ ライトニングシステム」は同じくらいの明度。
顧客の要望と髪への負担、サロンワークにおけるパフォーマンスも考慮して、最適な「抜き方」を決めていきましょう!
──アシスタントへの任せやすさはどうですか?
・ブリーチ単品より、クリアやライトナーを使用した薬剤の方がリフトの仕方が緩やかで粘性がでます。塗りやすくなるため、塗布ムラを起こしにくく、アシスタントに任せやすいです。
・「イルミナ ライトニングシステム」も操作性がよく、リフト力が安定しているので任せやすいですね。推奨放置タイムは30分で、サロンワークの回転も良いです。
・「ブリーチ:クリア」はしっかり置かないと抜けにくいですが、リフトの仕方が緩やかなため、アシスタントに任せやすいという利点もあります。また、パウダーブリーチのみよりも粘性が出るため、アシスタントでも比較的操作しやすいと思います。
──髪への負担を比較すると?
やはり30分で抜けてリフト力が安定している「イルミナ ライトニングシステム」が髪への負担が少ないと思います。
通常のブリーチよりはやさしいですが、過硫酸塩が配合されている製品であることは理解しておくべきだと思います。
実験まとめ
①オキシコントロールは「明度の見極め」と「塗布スピード」が鍵
1剤のパウダーブリーチに対して2剤のOX6%・4.5%・3%のように2剤を変えるやり方は、さまざまな手法や考え方がありますが、通常のサロンワークで考えやすい放置時間30分〜90分で考えたとき、OX6%が1番「短時間で目的の明度に到達」します。その反面ダメージが大きく、技術者の「明度の見極め」や「塗布スピード」が大切になります。
②クリアやライトナーでブリーチを「パワーダウン」
次に、1剤のブリーチに何かを加えてパワーダウンをする目的でポピュラーなのが「クリア」とのミックス。ブリーチパワーを弱める目的もありますが、薬剤全体のpHを下げてくれる効果があります。
「ライトナー」とのミックスもブリーチ単品よりパワーダウンしますが、薬剤全体のpHはアルカリ値が高いままのため、お客さまの髪の状態・目的の明度・施術内容に合わせて使い分けると良いでしょう。
・脱色力 ……ブリーチ>ライトナー
・脱染力 ……ブリーチは脱染力あり(ライトナーは脱染力なし)
「ブリーチ×クリア」と「ブリーチ×ライトナー」を比較すると、「ブリーチ×ライトナー」はアルカリ値がやや高いため、「ブリーチ×クリア」の方がより弱くなります。
③サロンワークでの使いやすさも重要
ブリーチはパワーを出すためにつくられていますが、イルミナ ライトニングシステムは過硫酸塩の配合バランスが意図的にある程度の明度で止まるように弱めに設計されており、今回の実験ではイルミナ ライトニングシステムは「ブリーチ×クリア」の考え方に近いと言えます。
ダメージを抑えながら、「塗布のしやすさ」や「ゆるやかな明度アップ」を考えると「イルミナ ライトニングシステム」「ブリーチ×ライトナー」「ブリーチ×クリア」はサロンワークでとても使いやすい薬剤。放置時間にゆとりが生まれ、アシスタントに塗布や判断を任せることも可能になります。
ただ、まったく髪が傷まないものではないですし、リフト力に限界はあります。
それを踏まえた上で、正しい使用法で使うと良いと思います。
お客さまのヘアカラーの自由度は広がり、デザインカラーも定着しました。
また、髪質改善や多彩な薬剤によって、お客さまの髪の状態が複雑な今だからこそ、僕ら美容師の「薬剤スペックの理解」が改めて大切だと感じています。
普段のスタッフのレッスンやセミナーの中でもお話させていただくのですが、ブリーチはあくまでベースメイクの手段であって、必ず髪に負担がかかるもの。
目的の色にするために何明度まであげれば良いか、どれだけ髪の「体力」を残した状態を保てるかが大切だと思います。
- Profile
- 福永圭祐
U-REALM カラーディレクター
ふくながけいすけ/1981年8月13日生まれ。U-REALMのカラーディレクター。モデルやタレントからヘアカラーの絶対的信頼を集める。カラー剤の開発に関わり、カラー理論セミナーにも定評がある。2020年8月に髪書房より『マンガで身につくカラーレスキュー』を発売。
- Instagram : @u_realm_keisuke