〈SHIMA ロサンゼルス〉が始動 — 世界と東京をつなぐ、新たな拠点で目指すもの

〈SHIMA ロサンゼルス〉が始動 — 世界と東京をつなぐ、新たな拠点で目指すもの

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(左)嶋 香緒里/〈SHIMA〉社長
(右)神能 裕貴/〈SHIMA〉ロサンゼルス 店長

photo:YUSEI KANDA
interview:YUI MATSUOKA

SHIMA ロサンゼルス

〈SHIMA〉が初の海外店舗〈SHIMA ロサンゼルス〉をセレブリティやトレンドショップが集うロバートソン通りにオープンした。“What’s next?”の精神で常に新しさを追い求めるSHIMAは、LAで何を目指すのか。社長の嶋 香緒里さんと、LA店長の神能裕貴さんに話を聞いた。また、神能さんにはLAのイメージをヘアスタイルで表現してもらった。

LAで提案する
華やかさとエレガンス

──今回、ロサンゼルスの気分をヘアで表現してもらいました。どんなイメージですか?

神能裕貴 LA店長(以下、神能):イメージは、今トレンドになりつつある、90年代のハリウッドスターやモデルが映画でやっていたバウンシーなヘアスタイルです。アイロンで巻くのではなく、ブローとカーラーだけでつくる艶っぽいボリュームのあるヘアに仕上げました。

──この場所で提案していきたいスタイルは?

神能:バレイヤージュなどでブリーチをするよりも、今はさりげない深みとツヤのあるグロスカラーを提案しています。ブルネットのようなカラーにレイヤーを入れてボリューム感を出し、仕上げはブローアウト。触りたくなるような柔らかさと、弾力を兼ね備えた質感のヘアスタイルを打ち出したいですね。

〈SHIMA ロサンゼルス〉ができるまで

──海外初出店にLAを選んだ理由を教えてください

嶋 香緒里社長(以下、香緒里):トップトレンドサロンのSHIMAとして海外で出店するなら、あらゆるポピュラーなものが生まれる場所、そして開放的な雰囲気がSHIMAのイメージに合っていました。

ここ、ロバートソン通りは2000年ごろからセレブリティたちに人気があって、今サロンの目の前にある「キットソン(Kitson)」も非常に有名でした。当時私がLAに訪れた際に、この通りの開放的で広々とした雰囲気がとても気に入ったんです。ほかにメルローズプレイスも出店候補だったのですが、ロバートソン通りにいい物件が見つかって。日当たりの良さが決め手ですね。

しま・かおり/大学時代に美容学校にも通い、ダブルスクールを選択。卒業後、「SHIMA」に入社し、現在は父の後を継ぎ社長として経営を担う。

──このタイミングで海外出店したことには理由が?

香緒里:SHIMAは1971年に創業し、3年前の50周年を迎えたタイミングで新たな挑戦をいくつか考えていました。しかしコロナ禍が重なってしまい、LA店は2、3年遅れてスタートできた形です。東京にこれまで多くのサロンを展開し、さらに〈ピッキー ザ ショップ/バー〉もオープンしたので、日本で東京以外にさらにSHIMAをつくるイメージが湧かなくて。次の出店は海外だと決めていました。

──LAにはどんな印象を?

(かんのう・ゆうき)2003年にSHIMAに入社。海外のリアルトレンドを反映したスタイルを武器に原宿店のクリエイティブスタイリストを務める。2024年から「SHIMA ロサンゼルス」店長。

神能:LAは本当に気候がいいですね。僕は生活するうえで気候を大事にしていて、晴れている日が多いとポジティブになってすべてがうまくいく、シンプルイズベストなタイプなんです。それから人も素敵で、ニコニコしながら挨拶してくれるフランクな感じの人が多いんですよ。ヘアスタイルをつくったときの喜び方も全然違いますね。感情や気持ちをストレートに伝えてくれる人がLAには多いので、そこもやりがいに繋がっていて、嬉しいです。

──LAへの移住に不安や困難はありましたか?

神能:一番大変だったのは、カリフォルニア州の美容師免許の取得です。英語の筆記試験を受けないといけなかったので、東京で仕事しながら勉強して、、、と大変な毎日でした。無事に合格してからも、言語や文化が違う新しい土地で、ゼロからお客さまを集められるか心配でしたね。ただ、SHIMAのサポートが大きく、カリフォルニアのインフルエンサーやモデルと自然に繋がり、口コミやSNSでお客さまが順調に増えています。SHIMAだったからこその成功というのが正直なところです。

柔らかなラインとテクスチャーで
LAに溶け込む有機的な空間

──LA店のコンセプトを教えてください

香緒里:サロンづくりでは空間全体のデザインをいつも心がけています。お客さまが座った時に気持ちいい空間かどうか、ヘアだけでなく快適な時間と経験を提供できるかが一番大事ですね。その中でLAでは、有機的な空間をコンセプトにし、広々とした空と木々が見えるガラス張りのデザインを採用しています。異空間を作り込むのではなく、ロバートソン通りの景観に溶け込むようにし、サロンの中に入ると柔らかく心地よい空間が広がるつくりです。

入り口にガラス張りのデザインを採用したことで、サロンにたっぷりと光が差し込む。鏡越しにも、ロバートソン通りの木々が目に入る。
サロンの最奥には、シャンプー台が並ぶ。

──内装で最もこだわったところは?

香緒里:全体的には、角のないラウンド形状の鏡や、左官技法で仕上げた柔らかなテクスチャーの壁、そしてフロアには高品質のウッド調タイルを使用しています。特にフロアの素材選びにはこだわり、LAに3回ほど床材を探しに行き、最終的にこれならいけるという素材に出会えました。

神能:社長自らデザインをしてることに驚かれるお客さまが多いですね。

香緒里:オープン前にもふらっと誰かがお店に入ってきて、「ここのデザイナーは誰なの?」って聞かれることが何回かありましたね(笑)

LAと東京で追い求める
WHAT’S NEXT

──これからのSHIMAについて聞かせてください

香緒里:世代交代してから14年かけて “スクラップアンドビルド” を実践してきました。東京のいくつかの店舗をクローズし、銀座エリアや表参道、原宿エリアにサロンを集約することで、トレンドサロンとしてのイメージをより強固にしました。

そしてコロナ禍に〈ピッキー ザ ショップ/バー〉をオープンした時には「51年目にしてなぜ突然バー?」なんてよく驚かれましたが、その理由も明確にあります。私たちはSHIMAに関わるスタッフやお客さま、国内外のクリエイターやインフルエンサーがサロン以外の場所で交流し、新しいクリエイションが生まれる場所を求めていたんです。そこで、ショップとバーを併設し、新たなつながりやアイデアを生み出す交流の場を提供することにしました。同じことをLAからも発信し、世界と東京、その中心にSHIMAがある。ハブとしての役割を果たしたいと考えています。

──LA店での目標を教えてください

神能:LAを選んだ理由の一つは、セレブリティが身近にいるから。彼らのヘアを担当することは、決して遠い目標ではありません。20年間のSHIMAでの経験と技術を活かして、十分に勝負できます。世界トップクラスのインフルエンサーやセレブリティが集まる場所にして、トレンドを発信する。そして日本トップのSHIMAが、世界のトップになっていく。世界のトップの人たちと東京をつなぐことが目標です。

──最後に。他国への出店予定はありますか?

香緒里:今後のことは私の頭の中だけで、トップシークレットです。これからのSHIMAを楽しみにしていてください。

木村 麗音
執筆者
木村 麗音

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