盛り髪師マチャコ☆に聞く「令和の盛り髪」はこんなにも進化していた!

盛り髪師マチャコ☆に聞く「令和の盛り髪」はこんなにも進化していた!

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横浜のJKたちが熱く盛り上がる「体育祭ヘア」。
今回は、横浜JKの派手髪を支える『盛り髪師マチャコ☆』さんを取材しました。

一体どんな人物なのか?そして盛り髪の現在とは?

まずは見てください
横浜JKの体育祭ヘアを。

このヘアをつくったのが、盛り髪師のマチャコ☆さん。

マチャコ☆さんは、横浜中華街のすぐそばにあるヘアサロン「VIBE & ANNEX(バイブアンドアネックス)」のクリエイティブディレクター。


2017年に放送された日テレ「マツコ会議」で盛り髪師として出演していて、すでに当時の横浜JKに大人気だった体育祭ヘアをより一層定着させた人物とも言えます。

そして5月に放送したTBS「マツコの知らない世界」にも出演。


ますます気になる令和の盛り髪事情を聞いてきましたよ〜!

マチャコ☆(今野雅子) / VIBE & ANNEX クリエイティブディレクター
Profile
マチャコ☆(今野雅子)

VIBE & ANNEX クリエイティブディレクター

1983年生まれ。宮城県出身。仙台のエステティック専門学校卒業後、都内エステサロンに2年勤務。2004年、株式会社フェブライオ・ディ・アレスに入社し、アレスショップ原宿店の販売員として勤務する傍ら、自社の商品開発やアーティストのヘアメイクとして活躍。2009年ハリウッド美容専門学校に入学し、2011年美容師免許取得。現在は横浜のVIBE & ANNEXにてクリエイティブディレクターとしてサロンワーク中心に活躍するほか、ヘアメイク、特殊系ヘアの外部セミナーなど幅広く活躍中。

──女子高生に盛り髪をすることになったきっかけは何ですか?

マチャコ☆

2015年頃、女子高生から「体育祭でセットしてほしい」と予約が入ったんです。その頃のセットアップはageha嬢が流行っていた時代のアップスタイルに逆毛を立てて、盛り盛りにするのが主流でした。

女子高生と事前に話していくうちに、「盛り髪にしつつ、飾り物をつけたい」という希望があって、アップスタイルに羽や、花、リボン、ぬいぐるみなど、つけたらかわいいなと思ったんです

当時はきゃりーぱみゅぱみゅさんのような、頭にでかリボンをつけたりする、いわゆる原宿系デコラティブヘアが流行していました。ageha嬢のような盛り髪ベースに、大きなリボンや花をミックスすることで、横浜JKの体育祭ヘアは独自の横浜スタイルに進化を遂げていったんじゃないかなと思います。

ブログやSNSで体育祭ヘアを発信しはじめたら、どんどん予約が入って、他のお店でも朝開けるようになるほど大人気になりました。今は体育祭ヘアが横浜の高校の伝統のようになっていますね

──いちばん気合が入った体育祭ヘアはどんなものですか?

マチャコ☆

1日目はブリーチ、2日目は塩基性カラーで色を入れて、3日目は盛り髪にセットアップという流れで、3日間かける体育祭ヘアです。

基本的には、体育祭の組分けされた色にカラーリングするのですが、最近は本人が好きな色に染めることも多いです。「黄色組だけど、黄色は嫌いだからピンクにしちゃう」とか。ピンクや薄い紫が人気です

──特殊系を織り交ぜた体育祭ヘアもありますね。

マチャコ☆

いまは早朝の体育祭ヘアは主に後輩に任せていて、コーンロウやブレイズなど技術が難しいメニューの高校生を主に入客しています

マチャコ☆

中には盛り髪に厳しくなった学校もあるようで、盛り髪はNGだけどコーンロウはOKという学校の子もいました。

応援団長や、成人式で袴を着るメンズからはブレイズのオーダーが多いです

成人式ヘア(マチャコ☆さんのInstagramより引用)

──もはやイベントとして成立していますね。

マチャコ☆

横浜のJKにとって、「体育祭」「文化祭」「卒業式」は学生の3大イベントです。そのタイミングは予約もたくさん入ります。

──マチャコさんはそもそも特殊系を得意とされていますが、セットアップも得意だったのですか?

マチャコ☆

サロンの周辺は結婚式場がとても多い立地なんです。それで、昔からセットアップをしにくるお客さまが多く、入社1年目からセットアップを勉強するカリキュラムにもなっています。

セットアップは営業開始2時間前から予約をとっていて、土日の朝はセットアップで満席になります。セットアップのカリキュラムを合格すれば、2年目くらいからアシスタントでも入客して稼げるようになります。デビュー前からセットアップの逆毛などのテクニックはもちろん、アイロンの使い方も上達します。なので、若いスタッフでもばんばんJKの3大イベントで活躍してもらっています

──体育祭ヘアの料金はいくらに設定していますか?

マチャコ☆

学生ベントや成人式ヘアセットは1時間以内に仕上げて、1万1000円です。
結婚式のお呼ばれヘアは5500円です

盛り髪で使うグッズ。これらはマチャコ☆さんの手持ちのものだが、盛り髪をオーダーする人は自分でアイテムを持参するのが基本。

マチャコが考える
「盛り髪 横浜スタイルの歴史」

──盛り髪の文化はどこからやってきたんでしょうか?

マチャコ☆

もともと日本には日本髪の文化があり、地域によって結い方やフォルムが違います。花魁の華やかな髪型も有名ですよね

マチャコ☆

この頃はきっと裕福な人は華やかな髪飾りをつけていただろうし、そうでない人はかんざしつけるくらいだったんだろうと想像します。

髪を結っていた時代から、ヘアカットする時代に変わり、現代はアイロンで巻くといったスタイリングをするようになりました。「名古屋巻き」が流行し、それが盛り髪の発祥と言われています。

マチャコ☆

平成の前半にはageha嬢、キャバ嬢、ギャルなどを中心に髪型を大きく、派手に見せる盛り髪が登場しています。

日本髪だったら、毛先は入れ込みますが、逆毛を立てて毛先を散らすといった盛り髪に変化しているのが大きな特徴ですね

マチャコ☆

そして、原宿かわいい文化が流行します。頭にでかリポンを乗せたり、スマホなどをデコレーションしたり。だんだん、ageha嬢のキレイめからかわいい文化に移ります。

マチャコ☆

「横浜スタイル」の盛り髪は、ここでキレイ系盛り髪にかわいい飾りをミックスして生まれたんじゃないかと思います

──世の流行を生み出すのはつねに女子高生ですね。

マチャコ☆

令和は自由と多様性の時代です。だから体育祭で分けられた組の色に染まるとも限らない、自分の好きな色にしちゃうのも自由、それが今の女子高生のスタイルなんでしょうね

ブレイズ、コーンロウなど
特殊系ヘアが得意!

──特殊系ヘアはどんな人たちからのオーダーが多いですか?

マチャコ☆

自分がダンス経験者ということもありますが、ダンスをやっている人が多いですね。今は習いごとランキング1位がダンスというくらいなので、子どもたちが発表会前に来ることも多いです。あとはフェスやイベントでやる人も多いです。

音楽のジャンルとしてもヒップホップが流行っているので、髪を編んでいるラッパーが多く、それを真似してやりたい人も多いです。

あとは編むと気合いが入るようで、格闘家、スポーツ選手もいらっしゃいますね

──人気のデザインは何ですか?

マチャコ☆

「ゴッデスブレイズ」というブレイズとウエーブのエクステを混ぜたデザインが人気です。海外で特に黒人女性を中心に大人気で、ウエーブを足すことで女性らしい雰囲気になります

マチャコ☆

また、薄い紫から水色、青にグラデーションに変化するエクステがSHEIN(格安アパレル通販)で大人気なんです。

それを使って、キラキラを混ぜて編んだり、すき毛で丸いかたちを連続させたエクステにアレンジした作品撮りもしました。ポニーテールでまとめると、とてもかわいいので今後のイベントヘアでも人気になりそうです

──前髪がくるんとしてるのがかわいいですね!

マチャコ☆

これは「べビーヘア」と言って、産毛をデザインするのも流行っていますね。海外だと「エッジコントロール」と呼んで、クセが強い産毛をかわいくデザインすることで、コンプレックスもポジティブに考えられるようになりますよね。

わたしはクリエイティブディレクターとして会社の商品開発もしています。それでべビーヘアを上手につくるための「エッジコーム&ブラシ」をつくりました。アイロンである程度クセをつけたら、専用ジェルをつけて、このコームのブラシやテールを使って整えます

融合するカルチャーのおもしろさ

成人式などの「セットアップ」はきちんと結い上げる日本伝統由来のもの、「盛り髪」はギャル由来のもの、ブレイズやコーンロウなど「特殊系ヘア」は黒人文化やヒップホップ由来のもの……。

と、なんとなくで、まったく正確ではありませんが、勝手に分類しているところがあります。

それが時代の流れとともに、JKの希望からすべてのカルチャーを融合した「令和の盛り髪」「横浜スタイルの体育祭ヘア」として融合する日が来るなんて、誰が想像したでしょう。

もちろんこれはマチャコ☆さんの得意とする技術が特殊系ヘアであったことが大きいです。また、マチャコ☆さんが所属するサロンがセットアップ需要の高い立地にあること。そして、体育祭ヘアで盛り上がる高校生の文化が横浜エリアにあったこと。

編集者は職業柄つねに新しいものを探しています。新しいものは世紀の発見から生まれることもあるけど、こうして身近なエリアで、さまざまなカルチャーが融合して、誕生していくこともあると再認識しました。

それは原宿や渋谷などトレンドに敏感なエリアだけじゃなく、一見静かなエリアであっても、にわかに沸き立つような可能性を秘めているのだと思います。

マキピピ
執筆者
マキピピ

ヘアデザインのこと、パーマ、データ分析が得意な全頭ブリーチ族。好きなことは海外旅行。苦手なことは貯金。

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