コンセプトは
「格好悪いやつを、格好良く」

「CUT純」オープンのきっかけは、加藤さんが2022年の年末に行った配信だ。有馬記念で競走馬“イクイノックス”に1,000万円を賭けた加藤さんは、「このレースに勝ったら美容室を出店する」と宣言し、見事的中。レースの払い戻し金、約2,000万円をもとに「CUT純」は誕生した。

すでに賛否が分かれそうな「CUT純」だが、翌月末まで解放している予約枠はファンでいっぱい。X（旧Twitter）では「なかなか予約が取れない」と阿鼻叫喚の声も沸き立っている。

コンセプトは「格好悪いやつを、格好良くしよう」。加藤さんが自身の視聴者を意識して決めたそうだ。果たしてどういったサロンで、どんな美容師が働いているのか。話を聞いた。

取材に応じてくれたのは、CUT純のオーナーで加藤純一さんの実姉でもある中村千絵（右）さんと、店長のヒロト（左）さん。

千絵さんは、4年ほど前から加藤さんの配信を手伝い、いまはCUT純のオーナーとして店にも頻繁に顔を出す。素顔は非公開だが、すでに切り抜き動画やまとめサイトで数多く取り沙汰され、ファンのなかでも有名な存在だ。

始まりは兄弟の何気ない話から

──なぜ、ヘアサロンを始めようと思ったのですか？

兄弟で事業を何かやっていきたいねっていう話を、何気なくソファに座りながら純一（加藤純一）としてたんです。やるなら人が一生必要とするものをやりたいねって。そこから、髪だったらほとんどの人が切るから「美容院をやろう」って話になりました。

そのままフワッとしてたんですけど、純一が有馬記念で当てて私も「本当にやるかも」と覚悟しました。ただ、配信中は当たった時のことよりも、賭けたお金がなくなることの方が怖かったですけどね（笑）

出店の賛否や心配する声もたくさんいただいたんですけど、着々と準備をして、改めて発表をしたときには大勢の方に応援していただけました。

──お客さんはやっぱりファンの方が多いですか？

純一のファンであることが第一なんですけど、私が思ってたより「純一のファンっぽくないな」って感じました（笑）。だってCUT純ができるまで、ファンの方と直接会うことはこれまでなかったわけじゃないですか。でも実際に会ってみたら、結構ファッションや美容に関心のある方もいて驚きましたね。

もちろん、CUT純は「格好悪いやつを、格好良くしよう」がコンセプトなので、「美容室は初めて」という方や「CUT純をきっかけに変わりたい」と勇気を出して来てくださる方も多くて、とっても嬉しいです。

オープニングメンバーの応募総数は300人！

──オープンで一番大変だったことを教えてください

私も純一も美容師ではないので、配信でオープニングメンバーを募集したら嬉しいことに300人ぐらいの応募をいただいて…。そこから選ぶというのが一番大変でした。

──300人はすごいですね…。どんな視点で選考したのですか？

半分くらいは私の直感なんですが、今までお客さんの立場だったので、お客さんとしてこの人に技術を任せられるか、自分が切ってもらいたいか。あとは全員が違う環境で育ったメンバーでお店を作っていかなきゃいけないので、チームワークを大切にできるかも重視しました。

そして、最終的に純一と一緒にオープニングメンバーの７人を決めました。地域とか働いているお店は全く考えてなかったですね。

──待遇面で、一般的なサロンとの違いはありますか？

私自身、スタッフのみんなには残業をしたらしっかりと残業代をもらうとか、休みをしっかり月何日取るとか、世間的に“普通”の働き方をしてもらいたいという想いがあります。

なのでこの業界では珍しいかもしれないけど、しっかりとした給与や残業代、休日出勤の規定も整えてみんなが働きやすい環境づくりを心がけています。

加藤純一を知らない人にも、愛される美容室に

──CUT純はどんなブランドを目指していきますか？

ユーチューバーの方と動画を撮ったり、コラボだとかはこれからもあると思うんですけど、ユーチューバーに会えるよとか、そういったところでCUT純の認知度を上げようって風には思ってはいなくて。

自然にそうなっちゃうかもしれないですけど、いわゆる聖地みたいにしようとも正直思ってないんです。基本的にはお客さまが「カット純で髪を切りに行きたい」「このスタイリストに切ってもらいたい」って思ってもらえる美容室を目指していきます。

──あくまで主役は美容師ということですね

ほんと思い起こせば私と純一の何気ない話から、みんなの人生をがらんと変えて、ここで働いてもらっているわけですからね。なので今はまだ、「加藤純一の美容室で働いてる美容師」って見方が多いと思うんですけど、 そこもいずれ変えていけたらと思っています。

たとえば「ヒロトっていう美容師がいて、彼が働いてる美容室がCUT純なんだよ」って、ひとりの美容師としてしっかりと活躍・認知されて、評価を得られるような状態にしていきたいです。

──ありがとうございます。さいごに、店舗を増やす予定はありますか？

今年中って言ったら難しいかもですけど、まずは都内に２店舗目を出店したいですね。たくさんの方に来店いただくなかで、予約が取りづらかったり、希望通りのメニューで予約ができないといった声もたくさん届いています。

それらを解決するには２店舗目は必要ですし、夢は大きくじゃないですけど…今後は東京以外のところにも出していければと考えています。

地元 岡山から上京し店長に

ヒロトさんは以前、地元岡山県の個人店で勤めていた。CUT純への転職を機に上京し、オープンから店長を任されている。300人の中からチャンスを掴んだヒロトさんは、一体どんな人物なのか。なぜ、CUT純で働こうと決心したのか。話を聞いた。

動画を見て「チャンスだな」って感じた

──なぜCUT純で働こうと思ったのですか？

岡山で美容師をしながらも「東京で挑戦してみたい」って思いはあったんですけど、なかなか踏ん切りがつかないままでいました。

そんなとき、加藤さんのオープニングメンバー募集の動画を見て、チャンスだなって感じたことがきっかけですね。後先考えずにまず応募しました。

──ヒロトさんはファン度でいうとどのくらいですか？

僕はライトな方だと思います。というかヘビーな人がとことんヘビーなんですよ。もちろん他のスタッフも加藤さんのファンです。

──接客ではどんな話題が多いですか？

やっぱり加藤さんの話題が1番ですね。そこはみんな共通だと思います。でも、美容の話も欠かさないように意識してます。CUT純の「格好良くしよう」ってコンセプトをちゃんと突き詰めていくみたいな。

ファン同士で語り合うのも素敵なことですが、それだけにとどまらず美容室の役割をしっかりと果たすことも大切にしています。

──実際に働いてみてどうですか？

いまはお客さまが待ってくださってる状態。美容師は集客が大変なので、それがこれまでと一番違うかな。もちろん僕たちもそれに甘えず、満足度やリピートにつながる取り組みを怠らないようにって感じです。

ただ、リピートの傾向も他のサロンとはちょっと違っていて…。たとえば「最初にヒロト（僕）で入ったから、次は〇〇（違うスタイリスト）さんで行く」だとか、スタンプラリーみたいなことをされるお客さまが一定数いらっしゃいます（笑）

CUT純で、美容師としてどこまでいけるか

──アシスタントの教育はどうですか？

まだ、CUT純なりの仕組みを作っている途中ですね。いまはアシスタントのカリキュラムを中心に、ヘアサロン「HONEY（ハニー）」グループさんの教育チームに委託させてもらってます。ただ、最後の核となるスタイリストデビューの合格基準はCUT純のスタイリストたちでチェックしています。

──外部に委託しているんですね

もちろんCUT純でも定期的に、スタイリストが講師になって技術やトレンドの勉強会を行ってますよ。アシスタントの教育を一部委託しているのは、安定した成長機会を提供するためです。社内教育も大切ですが、サロンワークの価値観や教育を外部から学んで、デビューまでにいろんな知見を得られるのもCUT純の特徴だと思います。

──たしかに、効率的な気がします

教育は外部を中心に、最後はCUT純のスタイリストがチェックする。そして人の部分、働き方や福利厚生は千絵さんが整えてくれる。だから僕たちは、“お客さまに満足してもらえるサービスを提供する” という本来の役割に集中できるんです。

──今後の目標を教えてください

やっぱり、美容師として自分がどこまで大きくなれるか試したいです。
CUT純は “１歩を踏み出して” 来てくださる方が多いので、自分がお客さまの人生の転機になっているのだとよく気付かされます。これからも学びながら、どんどんかっこよく（かわいく）お客さまをプロデュースしていきたいですね。

店長としての目標は、まずCUT純の基盤を築かなきゃですね。
みんな育った環境が違うオープニングメンバーってなかなか珍しいんじゃないですか。ほんとチームーワークとか課題だらけですよ。でも最近はチームミーティングをちょっとずつ増やして、忙しい毎日を送れています。

加藤純一さん本人からも
コメントが到着

加藤純一「姉弟で立ち上げたCUT純ですが、たくさんのスタッフやお客様に愛されて今があります。これからも頑張っていきますので、応援よろしくお願いいたします！」