自由な働き方を求める機運が高まり、業務委託サロンで働く美容師さんが増えている昨今。
前回業務委託サロンで働く美容師さんはどんな働き方を求めているのか? 将来への備えは? といった本音を、アンケートをもとに読み解いていきました。
今回は、主にサロンワークや学び方の変化といった、現場の価値観の変容についてクローズアップしていきます。
業務委託サロンで働く美容師アンケートを深読み!
前回使用したアンケートのデータをもとに、今回も考察していきます!
業務委託で働くの美容師さんへのアンケート
・ 期間 2023年2月1日~2月18日
・ 対象 業務委託サロンで働く美容師
・ 実施方法 ウェブアンケート(選択式5問)
・ 有効回答数 153名
前回はのテーマは「自由に働けること」へのニーズを通して、マネープランについて考察しましたが、サロンワークでの満足度について深掘りしていきたいと思います。
マンツーマンの施術に価値を感じている人多数!
働き手にとってもお客さまにとっても「マンツーマン」は魅力?
前回も注目した、この質問。
Q 業務委託サロンで働いてみて、現在の気持ちに近いのはどれですか?(複数回答可・3つまで)
「お客さまにマンツーマンで向き合える働き方が気に入っている」という回答が票を集め、70%近い人がアシスタントを使わないマンツーマン施術に満足度を感じていることがわかりました。
また、別の質問でも同様の傾向があります。
Q お客さまが感じていると思われる「業務委託サロンのメリット」を教えてください(複数回答可・3つまで)
自分自身が自由に働けるというメリット以上に、お客さまの満足度が上がっているという実感があるようです。お客様本人の声も聞かれるでしょうし、1つ目の質問の結果では「リピートがむずかしい」という選択肢の回答数は極めて低くなっています。
大量に集客できていた時代の1つの枠に何人も予約を入れて回すサロンワークではなく、美容師1人対お客さま1人でいかに提案できるかという売り上げの組み立て方に、美容師と顧客双方のニーズが変化しているのかもしれません。
事実、日本の人口はどんどん減少しているので、雇用型サロンでも参考にできることかもしれませんね。
マンツーマンだから育児や介護でも働きやすい?
同時に「育児や介護で休まねばならないときも、正社員サロンほど気を遣わなくて済むので気に入っている」という選択肢も30%近く選ばれていました。お子さんや家族の急病などは、お客さまに気を遣うのは当然のこと、同じサロンで働く仲間に対して気兼ねしてしまう部分が大きいのだということがわかります。
美容師がフリーランス化している状況を危惧する意見で聞かれるのが、‟教育”の文化を危ぶむ声です。古くから美容師さんたちは、師匠から弟子に技術を教えるやり方で発展してきました。そういった古い徒弟制に基づく厳しい風土や、レッスンの厳しさやわずらわしさが、雇用型サロンから離れる原因ではないかと考え、教育文化の衰退を危惧する人も少ないというわけです。
しかし、アンケート結果を見ると、転職そのものは教育のわずらわしさや徒弟性への不満がきっかけという人は「後輩のレッスンやミーティングなどがなく、サロンワーク以外の時間が自由になって気に入っている」は5%ほど、「厳しい上下関係や飲み会などがなく、人間関係の面で気に入っている」は10%ほどと、意外と少ない結果に。
また、こんな質問もしていました。
Q 現在、どのように技術や知識を学んでいるか教えてください(複数回答可・3つまで)
オンラインサロンや動画教育サイトなどを抑えて「ディーラーやメーカーの講習会で学んでいる」が半数を占めました。オーナーや店長に「行け」と言われていくのでなく、自分の意志で技術を学びたいと足を運ぶ人が半数以上いるということは、”教育文化の衰退”は杞憂なのではと思えます。
また、オンラインサロンやYouTubeを使って学ぶという選択肢もそれぞれ30%の票を集め、むしろ学び方が多様化しているということがわかります。
これらの結果から、雇用型サロンの人間関係や教育法が強くわずらわしがられているまではないにしても、育児や介護をしている人にとって働きにくさやいづらさを感じさせてしまっているという点を、正しく理解し受け止めていく必要があると感じました。
正社員を雇用するサロンは時代遅れ?……ではない!
「自分で経営するなら”正社員サロン”」が多いのも注目
一方で、こんなアンケート結果もあります。
Q 現状思い描いている今後のキャリアプランややりたいことはありますか?(複数回答可・3つまで)
「今と同じように業務委託サロンで働き続けたい」という人が6割近いですが、「独立して人を雇用するサロンを経営したい」という人が2割います。独立したいと思っている人だけで見ると、4割以上が人を雇用したいと思っているのは面白いなと思いました。
業務委託サロンで働いたからこそ、雇用型のサロンの問題点をクリアして、もっと時代に合った美容室をつくっていきたいという思いがあるのかもしれません。この結果は、今後どんなサロンが誕生するかとても楽しみになりました!
正社員雇用と業務委託経営のハイブリッド経営という例もあり!
業務委託サロンと雇用型サロン双方の視点で問題点をクリアに……といいましたが、実はすでに業務委託経営とのハイブリッドサロンがあります。2つほど紹介します。
- Salon Information
- ECLART
2021年4月にオープンし、2年で14店舗を展開するサロン。
「最高品質のヘアケア」をコンセプトに、美髪メニューやストレートに特化し、プライベート感のある個室サロンで支持を集める。
住所 | 埼玉県さいたま市大宮区桜木町2丁⽬2−6まゆずみビル2F |
---|---|
MAP | Google map |
- Twitter : @eclart_official
- Instagram : @eclart.official
オーナーの南裕介さんは、元業務委託サロンの幹部。正社員でも「自分の売り上げから6%以内で材料を注文できる」などの、まさに”業務委託ハイブリッド”な施策が個性的です。
「自分が働きたいサロン」をイメージしてお店づくりをした結果、正社員雇用での契約も業務委託契約どちらもハイブリッドにすることにしました。
自分のライフスタイルやプランに応じて選ぶことができ、それぞれにキャリアプランも用意しています。
- Salon Information
- ELIS
2007年6月オープン。「最高のクリエイティブ」と「最高のホスピタリティ」をコンセプトに京都府内で展開。
ヘアメニューだけでなくアイラッシュやネイルのトータルビューティメニューをそろえ、特にリーズナブルなアイラッシュが人気。アイリストには「ラッシュのスピード装着」のギネス記録保持者も。
住所 | 京都市下京区月鉾町63 月鉾町ビル |
---|---|
MAP | Google map |
- Instagram : @noismrecruit
関西の美容学生に高い人気を誇るNOISMグループも、業務委託サロン・ELISというブランドで3店舗を展開しています。ファッションショーのヘアメイクなども手掛ける強いブランドとリーズナブルなトータルビューティメニューで、集客力は抜群。
業務委託スタッフが勤めるサロンと正社員が勤めるサロンを分けて経営しています。
業務委託を希望するスタッフに対しては、自由に働きたい、朝礼やミーティングが嫌というイメージがあるかもしれませんが、弊社は業務委託スタッフ同士も仲良くコミュニケーションが闊達。
仕組みというより、大切なのはサロンの風土だと思います。
「多様化と自立」が美容室と美容師双方のキーワードに
2回にわたる業務委託研究、いかがだったでしょうか?
美容師さんも世間同様自由な働き方を求めており、業務委託サロンも雇用型サロンも、もっともっと働く人のライフスタイルやライフプランに寄り添った柔軟さが必要だということがわかりました。
客数を集めてこなす売り上げの組み立て方も時代に合わなくなってきていて、お客さま1人ひとりに深く向き合うように、サロンワークの形も変容していきそうです。
一方で、自由であることはビジョンを描いて目標を立てて成長する力が必要です。
また、1人と深く向き合うサロンワークは、お客さまにとっての”ビューティパートナー”と思ってもらえるくらい信頼される美容師として、さらにレベルアップせねばなりません。
働き方が自由になりサロンも美容師も多様化していくからこそ、それぞれが自立し、自分で学び自分で成長する力をつけることが必要なのだと思います。