「クリエーションは手段」先駆者、原田 忠セミナー

美容協同組合日本ヘアデザイン協会(横田敏一理事長、以下NHDK)が10月3日、アリミノ本社(東京・高田馬場)で「NHDK 2023 東日本地区 東京テクニカルセミナー」を開催した。

この日、ゲスト講師として登壇したのは資生堂トップヘアメイクアーティストの原田 忠氏。同氏はJHA(ジャパンヘアドレッシングアワーズ)で19年連続ノミネート・グランプリを2度受賞し、現在はプロフェッショナル審査員を務める。ファッションショーのバックステージやブランド広告のヘアメイク・商品開発などに携わるなど、その活動は多岐にわたる。

セミナーでは、「HARADA WORLD」をテーマに3スタイルの技術デモを披露した。それぞれにおいて見る人があっと驚くような仕掛けが施されており、瞬く間にヘアスタイルがチェンジする様はまさに“ヘアショー”。来場者を魅了した。さらにステージ脇には撮影セットが組まれ、デモの後には準備していたフォトグラファーとそのまま撮影へと移る。来場者はヘアショーといった三次元的クリエーションと、撮影の二次元的クリエーション、それぞれのアプローチを学んだ。

原田氏はセミナーの中で「クリエーションは手段です。大切なのは作品を通じて誰にどのようなメッセージを伝えるか」と語り、メッセージを伝えるには美意識や感性、技術だけでなく、『イメージを形にするまでのプロセス』が大切だと強調した。

デモの他にも、イメージの広げ方や自分の掘り起こし方、モチーフの探し方、ヘアの構成からモデル選びまで、作品創出のプロセスの一連を解説した。また、クリエイティブ感度の鍛え方として雑誌の裏表紙や表紙裏にあるラグジュアリーブランドのクリエイティブ広告を用いた方法を紹介。来場者を巻き込む形で“妄想の膨らませ方・仮説の立て方”を伝授し、学びと活気に満ちたセミナーとなった。

つぼみのように前方に伸びるのは留めた毛束。原田氏がそれを解くと、花開くように一瞬で広がりマーブル模様が現れた。赤の補色となる緑が差し色となり、デザインに主従関係が生まれた。

丸いアフロヘアの耳元から垂れるのは革紐で縛った三つ編み。耳元の革紐を引くと、三つ編みはウェーブ状に巻かれていき、それをかんざしでアフロに留めていく。すると丸いシルエットから縦型のシルエットへと変化し、ふんわりとしたアフロとライン感のある編み込みがコントラストを演出。同色の素材を質感の違いで魅せた。

原田氏が手に持つ玉のようなエクステンションも、仕掛けとなる紐を引っ張ることで平たく畳まれ違ったヘアピースへと変化。顔周りにあしらった造花も原田氏の手作りで、「ないものは全て作ります」とディテールの作り込みを徹底している。