韓国最大手のヘアサロンブランド「ジュノヘア(JUNO HAIR)」が、米投資会社ブラックストーンと株式譲渡に向けた最終交渉に入ったと韓国経済紙の「毎日経済」が報じた。創業者カン・ユンソン代表は経営権のほとんどを手放しつつ少数株を残し、トップにとどまる意向という。評価額は8,000億ウォン(約850億円)超とされ、ヘアサロン業界として前例のない規模の買収劇になる可能性が高い。
ジュノヘアとは

ジュノヘアは1982年にソウルで1号店を開業し、現在は韓国内に直営店約180店、スタッフ約3,000人を抱える。全店舗を本部主導の直営方式で運営しているためサービス品質を一律に保ちやすく、10年以上勤続のスタッフが250人を超える「終身雇用型サロン」として知られる。売上高は2019年の1,800億ウォンから直近では3,000億ウォン台へ拡大。昨年はフィリピン・クラークに海外1号店を出し、タイ、シンガポール、日本、ベトナムなどへの進出計画も公表していた。
買い手・ブラックストーンの狙い
買い手となるブラックストーンは、運用資産残高が1兆ドル超に達する世界最大級のPEファンド。PEとは未上場企業や非公開化した企業を買収し、資本投入や経営ノウハウで企業価値を高めたのち、株式売却や再上場でリターンを狙う投資ファンドを指す。ブラックストーンは豊富な資金力を背景に、買収先の海外展開やブランド強化を後押しする手法で知られ、韓国では医薬品流通大手ジオヨンなどへの投資実績がある。

業界へのインパクト
日本ではすでに「ジュノジャパン(JUNO JAPAN)」が設立されており、日本展開に向けて準備が進んでいる。取引が成立すれば、ジュノヘアは潤沢な資本を得てこれらの海外事業拡大にさらなる弾みをつけられる見込みだ。また、同社の教育機関「ジュノアカデミー(JUNO ACADEMY)」はヴィダルサスーン本部と同じカリキュラムを共有しており、グローバル研修の拡充も期待される。
カン代表は、「ジュノヘアを韓国を代表する美容ブランドから、世界的なブランドへと飛躍させるために売却を決断した」と伝えられている。
K-ビューティ企業の大型買収といえば、2018年にロレアルが「スタイルナンダ」を手に入れた例が知られるが、サロン業態で今回ほどの規模は初めて。韓国式の教育システムと外資の資本力の組み合わせが、新たなキャリアパスやビジネスモデルを生み出すかどうか注目される。交渉が正式契約に至るかは今後数か月以内に決着する見込みで、動向を追っていきたい。

1960年生まれ。3店舗勤務後、1982年JUNO HAIRをオープン。教育を重視した経営手法にこだわり、韓国国内外に約181店舗を展開。英ヴィダル。サスーンアカデミー修了。漢陽大学校大学院経営コンサルタント課程修了。韓国美容業界では“起業の神話”を築いた人物として知られている。