ミルボン 新体制による2024年方針発表3つの柱
株式会社ミルボン(坂下秀憲社長)は2月5日、同社2024年度の政策プレゼンテーション「NEXT VISION」をオンラインで配信した。
2024 年1月1日より新社長として坂下秀憲氏が就任した同社。冒頭、前社長である佐藤龍二会長が本年度からの新たな体制とともに「現代は、激動と変化の時代。新社長の若さと新たな改革で美容業界をリードすると期待している」と力強く挨拶。
佐藤会長からの紹介で登場した坂下社長は、「美容師さん・サロンさんを通じて社会に貢献するというミルボンの哲学を受け継ぎ、豊かな美容市場を創造していきたい」と述べ、坂下新社長より2024年度の政策が発表された。
坂下社長は、2020年のコロナ禍から昨年までの振り返りをしたうえで、美容市場の長期的な2つの成長ドライバーを
➀技術メニューにおいて普及活動から高価値づくりへ
②知販品において高価値づくりを追求しながら普及活動へ
とし、美容活動を牽引していくとした。
これまで成長軌道を辿っていた美容業界であるが、近年、美容市場を牽引してきた女性や高齢者の就業者数は高止まり、技術メニュー比率もこれまでと同様の成長は難しい時代に突入する。
客数が減少する時代の施策として、上記2つのドライバーを基軸に「政策コンセプトの3つの視点」及び「価値対応の可能性」が発表された。
政策コンセプトの3つの視点
1 就業者数・減少傾向によって、客数の減少により客単価がさらに重要に
2 物価が上昇する中、顧客への高価値サービスに成長の芽
3 リアルとデジタルを融合させた体験価値
価値対応の可能性
・「技術メニュー」と「専門性」 多様性に応える美容師の価値対応や知販※
・「知販」×「体験ニーズ」 顧客体験や顧客と知販の接点づくり
・「知販コミュニケーション」 知販体験においてお客が抱えている不安を解消
※ミルボンでは「店販」を髪のプロフェッショナルである美容師さんの知識・知見を伴って提案するという意味から『知販』と呼んでいる。
3つの可能性を創造していくことで、ビューティプラットフォーム構想としての美容室の新たなあり方改革を推進していく。
これらの価値対応を実現する具体策として、
ACTION1 高価値メニューによる売り物づくり
ACTION2 新たなサロンのあり方 Smart Salon
ACTION3 キャリアパス人材育成
の3つのテーマで2024年度の方針が発表された。
2024年の方針
ACTION1 高価値メニューによる売り物づくり
ヘアカラー・オーガニック・ヘアケアを軸にした高価値メニューによる売り物づくりを推進する。
ヘアカラー
■感動の起点を創る「高価値カラー」として、アイブロウ似合わせカラーメニュー「カミマユカラー」を提案。
・ヘアカラー×アイブロウ「im」を組み合わせたメニュー提案
・「髪を染めてメイク(眉毛)を変えたい」というお客の潜在ニーズを顕在化
■ヘアカラーブランドごとのターゲット顧客推奨「デザインカラーメニュー」
ヘアカラー価値への対応力を高め、新たなサロンカラーによる感動の連鎖を創造する。
オーガニック
■ヴィラロドラ カラーメニュで大人のお客にアプローチ
・高価値カラー提案セミナー
・ミルボンオーガニックから新ブランド「プジョリ」発売予定
・オーガニックプリ―チャー認定制度「プジョリ版」を追加
ヘアカラーからヘッドスパ、シャンプー&トリートメントまで、オーガニックでつながるトータルメニュー提案を推進する。
ヘアケア
Aujua
■顧客の価値観の多様化に伴い、髪質対応幅の拡大したことによって、地肌からボディまでのケア提案を推進。
・スカルプヘアシリーズから「プレセディア ライン」を今春発売予定
・ヘアケアとスカルプケアを同時に施術
・全身の肌へと領域を広げたボディケアシリーズ Aujua「フェリアージュ」を今春発売予定
■Aujuaソムリエ・Aujuaコンダクター向けの各種セミナーを実施
「エビデンスコミュニケーション」を軸としたスカルプケア提案の活性化を図る。
MILBON
・「エンハンシング ビバシティ」によるスカルプケア提案を推進。
ACTION2 新たなサロンのあり方 Smart Salon
「Smart Salon」とは、リアルとデジタルを融合させ、圧倒的な「知販」を叶える体験型プラットフォーム。「技術スペース」「体験スペース」「milbon:iD(ECプラットフォーム)」 の3つの場を連動させ、「探す」「試す」「選ぶ」楽しさのある顧客体験(=スマート体験)をプロの美容師がいる安心感のもとで実現するサロン。
昨年はテストマーケティング期間として、コンセプトに賛同した23店舗のサロンがSmart Salonとしてオープンした。
プレゼンテーションの中で、AFLOAT RUVUA(東京・新宿)、KENJE 平塚LUSKA(神奈川県平塚市)、LaBless グランフロント大阪(大阪・梅田)、pikAicHi (熊本県熊本市)の4サロンが登場し、昨年Smart Salonとしてリニューアルオープンしてから顧客の反応がどう変化したか、スタッフ成長の状況などをコメント。
「VM(ビジュアルマーケティング)フォーシーズン定期便」で知販商品の視覚的認知アップ、トライアルキット「DAGASI」でお試し機会の創出、「KAORIUM」で 期間限定企画を準備するなど各社の取り組み事例の他、生産性の向上や生涯顧客につながるSmart Salonにより、美容室における新しい体験価値の可能性が発表された。
本年、新たに以下の2つの機能を追加し、今年度より全国への展開を本格的に推進。美容のインフラを目指す。
STYLE STOCK (スタイルストック)
仕上がりヘアスタイルや美容室で使用した商品を顧客の「milbon iD」のマイページに連携させる「STYLE STOCK」を展開。美容師のコメントも記載でき、顧客の携帯に履歴としてストック。美容師の遠慮・お客の遠慮から生じた溝を埋め、お客が好きな時間にヘアスタイル情報を楽しむ時間を創出する。
Smart Salon展開サロンには「STYLE STOCK PLUS」の提供をスタート。セット面に設置されたスマートサロンビューアに使用商品を表示でき、「知販コミュニケーション」を円滑にする。
LIVE SHOPPING(ライブショッピング)
milbon:iD会員向けの、専門的知見や旬の情報を楽しむ LIVE SHOPPING のサービス提供を2023年度に20回開催し、約5,000万円のサロンの売り上げに貢献できた。
本年度は、お客の知販品への興味や質問にデジタルで寄り添うライブチャンネルを段階的にサロンに向けて開放していく考えだ。
ACTION3 キャリアパス人材育成
リアル×オンラインを駆使した人材育成で「顧客信頼度の高い美容師・美容室づくり」と「生涯美容師として着実な成長」を目指す。
➀ワンオペ生産性150万円を目指す人材育成
②なりたい美容師像ロールモデルに沿った各種カリキュラム
・現在85名のビューティソムリエが活躍。専門性を身に付けるビューティソムリエ育成制度の推進
・今年度より、スタッフ教育を顧客視点でとらえたビューティレセプションソムリエが新たに追加
・ビューティヘルスケアソムリエをパイロット版でスタート
・ヘアケアソムリエ トリートメントエキスパート、ヘアケアソムリエ スカルプケアエキスパートの推進
さらにヘアケアやヘアカラー技術エデュケーションを進行し、アビリティイベントも引き続き活性化を進める。
ビューティライフケア戦略
昨年より、ビューティライフケア戦略としてビューティヘルスケア領域へのチャレンジをした同社。
本年度は、「肌と髪の悩みにパーソナルに寄り添う」新ブランドを2024年秋に発売予定。美容室におけるビューティライフケアの可能性を提案する。
また、パナソニックと共同開発を行った「ELMISTA(エルミスタ)」において、顧客認知の高いエルジューダブランドでもエアコンクを準備する。
最後に、坂下社長は未来の美容業界において
「時代や顧客の変化の本質をいかに掴み、何をもって成長していくか。複数のシナリオを用意し、そのシナリオをモニタリングしながら、素早い軌道修正をできる状態にしておくことが重要。共に成長するシナリオを描き、豊かな美容体験を生活者に提供することで、美容室をその街のインフラにする」と語った。
今後も美容を「産業」にし、美容室と共に未来を創る同社に注目だ。