教えて渡井さん! 弱酸熱トリートメントって何ですか?

教えて渡井さん! 弱酸熱トリートメントって何ですか?

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“弱酸性”のディグレア エン トリートメント。「弱酸熱というのは後づけなんです。それはなぜかと言うと……」商品開発に携わったWataiの渡井さんが酸性領域施術と美髪ブームに一石を投じる。

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弱酸熱トリートメント誕生の背景とは?

渡井タケト

グリオキシル酸はpH2〜5が多く、純度が高いほど効果が出ます。この濃度設定を濃くするほどクセが伸びるんですが、髪を無理やり収れんさせてイミノ結合をつくる。残臭は出るけど、縮毛矯正ほどのダメージはなく、クセを伸ばすことができます。これが5、6年前はすごく新しかったし、ハイダメージ毛でもできるのが大きなメリットでした。

 ただ実際にハイダメージ毛の人に施術すると、決して髪にいいとは言えない内容でした。グリオキシル酸は髪の内部の水分を脱水させて矯正して、イミノ結合をつくる。たんぱく質を焼いている状態……というところで、「縮毛矯正と変わらないのでは?」という疑問が僕には出てくるんです。それに縮毛矯正は1回かけたら長期間真っ直ぐですが、酸性ストレートは短期間でクセが戻ります。

 僕は当時、アイロンでのプレスはしていませんでした。ツインブラシでブロー後、220℃のアイロンで1回スルーする方法です。イメージ的にはアイロンからの圧力を髪に与えず、髪の球体を平たくつぶすようなことはしないように細心の注意を払って施術してきました。また外部の講習で「アイロンは酸熱施術用のアイロンを使ってくださいね」とアルカリ施術とは使い分けるようにと伝えても、使い分けない人がほとんど。そして酸熱ブームが盛り上がるほどにやり方が変わってしまった。そりゃ、強酸つけて220℃のアイロンでぐいぐい伸ばしたら、縮毛矯正じゃなくても髪は伸びるんですよね。お客さまの髪は硬くなるばかり。美髪ブームもあいまって、極端なところまで酸性施術が進んでしまって、僕はずっと違和感を抱いていました。


 現在も酸熱ブームで、GMT15%、スピエラ5%でクセを伸ばしますよという謳い文句が多く見られますが、ハードなアイロンワークを前提にしてのことですから、結局同じ道をたどるでしょう。仕上がった髪の手触りがどんなにやわらかくても、時間がたつとボロボロの状態になって、困ったお客さまがうちのサロンに来るというケースもとても多い。SNSやオンラインサロンで髪質改善と謳って、美しく仕上げているように見せたって、実際のお客さまの髪がキレイでなければ意味がありません。


 でも今は、キレイになるイメージが先行して売れる時代。正しいから売れるのではない。でも満足していないお客さまがたくさんいる状態になってしまいました。何も解決できず、ただ髪が傷んで、コンプレックスを抱えているんです。僕はこういう状態に何かおかしい、SNS集客が主になっているから、過剰広告になっているんじゃないかと思っています。

酸性領域の施術はシンプルに考えるべきであって、この2つは不変です。

・過度なpHの施術はよくない
・過度な温度で強いテンションをかけたアイロン施術はダメ

髪が硬くなる原因はこの2つ!

酸性領域の施術によって髪が固くなる原因は以下の2つ。

・強酸
・オーバービルド

 オーバービルドとは、髪にいろんな成分がくっつきすぎて、変なゴワつきが起きている状態です。あれがいい、これがいいと聞いて、さまざまな施術を重ねているお客さまの髪に多く見られます。僕のサロンでは新規の2割ほど、僕のお客さまだと3〜4割が髪がオーバービルドしています。


『エン トリートメント』はオーバービルドしにくい処方になっています。pHでスケールをはかる美容師がいると思いますが、pH8以下で施術するのが髪にいい、という基準は実はありません。髪にいいたんぱく質、アミノ酸などありますが、いちばん浸透しやすいのは中性領域〜弱酸性領域のpH5〜7。ただ、メーカーによって同じケラチンでも手触りの違いや、本当に補修されているのか、色の発色がよくなっているかなどバラつきが起こる。それが『エン トリートメント』はpH6を基準にその周辺でたんぱく質をつくっているから、ブリーチし終わった髪でも、酸熱トリートメントで酸性領域に引っ張った髪でも、ちゃんとベースとして色も入れることができます。他メーカーと同じケラチン、同じアミノ酸、同じセラミドという表記だけど、シンプルに効くんです。

酸性のメリットとは?

 なぜ酸性がいいものだと考えるのでしょうか? それは肌が弱酸性だからだと思います。でも食べたものを消化する胃は強酸を出していて、本当に酸性がいいかどうかはわかりませんよね。酸性施術の行く末と、アルカリ施術の行く末をちゃんと理解して見ていれば、そういう発想にすらなりませんが、でも今は極端にやらないと売れない。ただ僕は、酸性=髪にいい、頭皮にやさしい、自然環境にいい……という流れは間違っていると思います。もちろん、酸性でもアルカリでも、いいものはたくさんありますけど!


 酸性のメリットをひと言で言うならば、「傷みにくいとイメージできること」。「酸性はいい」って美容師がたくさん言っていますから。

2液を正しく塗布できていない人が多い?

 酸性ストレートの2液は本来20分くらい放置しないと結合しません。でも10〜15分で流す人がとても多いです。きれいな仕上がりにできないという人は、2液の塗布にムラがあります。2液を正しくしっかり塗るのってとても大切なんですが、1液ばかり重要視されています。2液は1液よりも3割増しくらいで使って当たり前。だから酸性ストレートは失敗しやすい。


 どんな施術でも、正しく髪に浸透する成分が必要です。髪がアルカリに引っ張られていても、酸性に引っ張られていても、正しい位置に戻す。今は酸性かブリーチに寄っていますから、酸性ストレートが合わなかったからアルカリに戻そうという人が3回施術したらアルカリに寄るような設定の商剤が必要だなと思って、そこで生まれたのが弱酸性の『エン トリートメント』です。


『エン トリートメント』は泡で出てくるので、ムラにならずに塗布できます。使用量が少なくすむので、原価も安くすみます。アイロンは170℃でやさしくすることをおすすめしています。一般的なシステムトリートメントよりも1週間程度仕上がり感が長持ちします。


 ダメージした髪は怪我をしているのと同じイメージ。『エン トリートメント』を使うときは、たとえば傷の部分はアミセラ、ケラ、アルケラを塗って、ヒアルロン酸を含んだハニーで覆う。最後にシルクという包帯を巻く。この怪我が骨折なのか、切り傷なのかでアイテムの使い方が変わります。どういう順番で使うと最適なのか、それを見極めて自分で決められるのが『エン トリートメント』です。髪のpH、ダメージ、たんぱく質の量などが正しいバランスであれば、髪は根元から毛先までつやつやです。その状態に近づけるのがきれいな髪への近道です。


 今は原料が高くなっていますが、『エン トリートメント』は、初回導入しやすい3〜4万円(全6種の合計)。これで1回8,000円〜15,000円のメニュー価格なら原価率5%以内におさまります。フリーランスの人でも導入しやすいですよね。臨店講習は必要ですが、使い方が難しいのではなく、今サロンにあるトリートメントとの組み合わせ方を中心に伝えています。


 トリートメントとして誰でも使えて、どんな人でも結果が出て、美容師のためにも、お客さまのためにもなる、
それがエン トリートメントなんです。

↑渡井さんがトリートメント施術した髪のビフォー&アフター

トリートメント界隈は今後どうなるの?

 細かなところが次のステージになると思っていて、たとえばアルカリの溶剤でオーバービルドをといて、酸性のトリートメントでケアするとか、パーマの中間水洗を見直して、ちゃんと中間領域まで持っていけるようにするなどです。


 また、pHにこだわらないトリートメントの使いこなしが大切になります。pHは差別化するために出てきただけなので、正しい毛髪診断、正しいケアの技術力向上、正しい施術をしましょう。


 僕は酸性トリートメントの未来はあると思うけど、それはあなた次第! 目の前のお客さまの髪がきれいになっているか。それを忘れずにこれからも取り組んでいきましょう!

渡井タケト[わたいたけと] / Watai代表
Profile
渡井タケト[わたいたけと]

Watai代表

1985年8月22日生まれ。静岡県出身。早稲田美容専門学校卒業。都内サロン勤務を経て、渡米。帰国後、静岡で実家のサロンの副社長就任。2019年、東京・自由が丘に自身が代表取締役を務めるWataiをオープンし、’21年同地に拡張移転。

ディグレア エン トリートメントのラインナップ

『ディグレア エン トリートメント』は現在6種のラインナップで今後も続々と追加予定。トリートメント以外にも、あらゆる施術の前後処理としても使えて、他商品との組み合わせも対応可。

アミセラ 400mL
毛髪内部に潤いを与え、パサつきを防ぐ。
主な成分/14種類のアミノ酸、5種類のセラミド、13種類の植物性オイル
ケラ 800mL
ダメージで失われたたんぱく質を補い、内部を強力に補修。
主な成分/加水分解ケラチン、ヒドロキシプロピル加水分解ケラチン、クレアチン、アルギニン
アルケラ 800mL
毛髪内外部のケラチン、アミノ酸と接着して弾力をアップさせる。
主な成分/アルコール、加水分解ケラチン、植物性エキス
ハニー 1000g
はちみつの保湿力で、潤いと柔軟性のあるなめらかな毛髪に導く。
主な成分/4種類のハチミツ、11種類のアミノ酸、3種類のヒアルロン酸、生ケラチン、生コラーゲン、生シルク
シルク 200mL
キューティクルを補修して、ねらった質感をつくる。
主な成分/シルク、強化コートオイル(アミノプロピルジメチコンなど)
グリオキシ 400mL
毛髪の強度を上げて、ハリとツヤを与える。
主な成分/グリオキシル酸

【問い合わせ先】
株式会社クロッコ
Tel.092-408-4447
sp@croco-d.jp
お電話でのお問い合わせは平日10:00~17:00まで

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執筆者
有希牧野

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