8/1発売のNEXT LEADER9月号の特集テーマは「U-30の経営論」。この数年で業界内における30歳以下の経営者の存在感が増しています。今年30歳と言えば、大谷翔平や羽生結弦などのアスリートを生んだ1994年世代としても有名です。さらにその下には、八村塁、山本由伸などを輩出する1998年世代が控えています。SNS集客だけでなく、フリーランスサロンや早期育成が当たり前になった時代に美容師になった彼らのマネジメントにはどのような共通点があるのか? 次世代をけん引するニューリーダーの素顔に迫りました。
【編集部の取材ウラ話】
「美容バブルを知らない世代がイノベーションを起こす」と題し、1985年前後に生まれた世代に着目した特集を行ってから早6年。業界では次の世代である30歳以下の経営者たちが頭角を現しはじめています。この世代にはどんな特徴があるのでしょうか?
特集のイントロダクションでは、今年30歳になる1994年生まれ(以下94世代)の美容師人生モデルを表にまとめてみましたが、1985年生まれ(以下85世代)の世代と比較するとよりわかりやすいでしょう。
85世代

・多感な思春期にカリスマ美容師ブーム到来
・美容学生数がピークを迎えたころに高い競争率をくぐり抜けて入社
・教育はまだトップダウンが通じており、年月をかけてスタイリストデビュー
・スタイリストデビューした頃から本格的に景気は底冷え、人口減少も本格化
・美容師として最も充実する20代後半に個人集客の時代が到来
94世代

・カリスマ美容師ブームが起きた頃はまだ6歳
・美容学校に入学した頃からネット集客からSNS集客にシフトしはじめる
・美容室に入社した頃からフリーランスサロンが急増し、教育サロンの離職率が高まる
・入社2年以内の早期育成が浸透。技術を深める時間がないままスタイリストデビュー
・美容師として最も充実する20代後半に新型コロナが流行。自分を見つめ直す機会に
こうして比較すると、85世代は「トップダウンで教育を受けてきたやり方が下に通じなかった世代」であり、「不景気の影響もあり、憧れていた美容師像とのギャップに苦しんだ世代」であると言えます。だからスタッフファーストを重視し、理念共有を大切にします。一方、94年世代は「個の時代を生き抜いてきた世代」であり、「教育サロンとしての恩恵をあまり受けてこなかった世代」。それがチームワークへの憧れになり、教育を重視する姿勢に結びついているような気がします。
以前、LECOの内田聡一郎さんが「これからはチームの時代」と言っていましたが(当時はまだ個人集客全盛だった)、もしかしてこういう時代が来るのを予測していたのかもしれません。実際に94世代のサロンのスタッフは本当によく練習しているし、チームならではの一体感を大切にしています。時代が個人に走りすぎたせいか、なんとなく王道のサロンのあり方により戻しが来ている印象を受けました。
ただ、求人難は変わらず、経済の低成長はずっと続いていたこともあり、人材に依存するサロン運営にこだわらず、さまざまな事業に手を広げていたりするのも94世代のもう一つの特徴です。プロダクト事業や教育事業だけでなく、ネットワークを活用したビジネスまで、効率を重視するリアリストな一面があったりします。
さて、今回は94世代の経営者の取材がメインだったですが、30歳以下ということで、さらに下の98世代の経営者にも取材しました。彼らはいわゆるZ世代。教育サロンとフリーランスサロンの構図なんて関係なく、よりビジネスとしてサロン経営、美容業をクールに捉えている印象を受けました。もしかしたら美容業界を本格的に変えてくれるのは彼らかもしれません。そんな頼もしさすらありました。また機会があれば、彼らZ世代にも注目していきたいと思います。
以上、現場からでした。
<今月のコンテンツ>
・個の時代を生き抜いてきたゲームチェンジャー
・カリスマブームを再燃させるY2K経営者(中村雄樹/REDEAL)
・創業3年で25店舗展開したZ世代のホープ(中川俊樹/EXCIAグループ)
・透明性を武器にフルスロットルで成長(鎌形 諒/AI TOKYO)
・1人ひとりが強みを持つ“主人公が集まる場”づくり(内海風我、松岡 諒/Null)
・グローバル発想でKYOGOKUブランドを世界展開(京極 琉/salon Ryu)
・ハイブリッドな教育で生涯雇用&生涯顧客をめざす(川原拓也、中村賢人/alo)


NEXT LEADER 9月号「U-30の経営論」のご購入はこちらから!

- 執筆者
- 渡辺 淳司
「NEXT LEADER」編集長