7/1発売のNEXT LEADER8月号の特集テーマは「ワンオペサロン」。求人難や早期離職者の増加に伴い、アシスタント数が少ないサロンが増えています。特に地方や郊外に行くほどその傾向は顕著。こうした現状の中で、多店舗展開サロンは働き方の一つとしてワンオペサロンをつくり、個人店では売り上げの天井を越えるべく差別化に取り組んでいます。いずれにしてもサロン軒数が増えていく限り、この流れは止められません。アシスタント枯渇時代を生き抜くための仕組みづくりと生産性の上げ方を紹介します。
【編集部の取材ウラ話】
今月の特集は「ワンオペサロン」です。日本の人口は2011年以降減少し続けていますが、その一方で理美容室の店舗数は26万9,889軒と増え続けています。もちろん廃業届を出していない個人事業主もいるので正確な数とは言い切れませんが、この増加の要因は、ワンオペを主体とする「小さな独立」やフリーランスサロンの増加によるものと考えられます。
アシスタントの雇用に積極的な教育サロンにとっても「ワンオペ営業」は他人事ではありません。依然として続く求人難と定着難。スタッフが定着したとしても、早期育成、早期デビューの流れがある限り、スタイリスト数が増えていく流れは変わりません。教育サロンとしてのバランスを維持するためにも、ワンオペ業態の活用がマストになってくるというわけです。
そこで今回の特集では、経営編として「ワンオペサロンの仕組みづくり」を、現場編として「ワンオペの生産性の上げ方」を取材しました。
昨年30周年を迎えた静岡県の「牛若丸」では、コロナ前からベテランのママ美容師サロンと、社内業務委託サロンといった2つの業態でワンオペサロンを展開しています。特に業務委託サロンは、知り合いのサロン経営者たちからフリーランスサロンの急増によるスタッフ離職の話を聞いていたため、2018年には業務委託としての働き方を早々に整備したとのこと。現在10名の業務委託スタッフがグループ内で働いていますが、「中価格帯で集客する業務委託サロンが多い中、『牛若丸ブランド』を活かすことで高単価で集客できるのが最大のメリット」と語っていたのがとても印象的でした。
続いて紹介するのが愛知県岡崎市の「ルプラボウ」。同社では①教育サロン ②ファミリーサロン ③ハイキャリアサロン ④シェアサロンと4つのサロン業態を展開していますが、アシスタントは教育サロンに集約させることで、サロンの鮮度を維持しています。その他の業態は基本ワンオペですが、印象的だったのはハイキャリアサロンの成り立ちの話でした。
これは牛若丸でもほぼ同じでしたが、育休明けの女性美容師が元いたサロンに戻った際に、若いスタッフとのハレーションが起きます。そもそも年齢が離れており話が合わないうえに、必要とする技術も一方は白髪染め&ヘアケア、一方はハイトーンカラーと全然違います。さらに夕方までの時短勤務であるため、レッスンでの信頼関係も築けずに若いスタッフからすると不満が生まれ、徐々に関係性に歪みが生まれてくるというものです。こうした課題を解決するために生まれたのがハイキャリア美容師向けのワンオペサロン。ルプラボウでは店舗管理者も置かず、40%以上という高い還元率でベテランの女性美容師が活躍しています。
続いてはワンオペでの生産性のあげ方です。今回の特集では手法は違えど、月間平均売上200万円を超える2人の美容師を取材しました。
福岡県北九州市の「山と空」は一言で言えばVIP客戦略です。橋本勘太代表は独立直後は予約が取れない顧客もいたこともあり、無理して長時間営業をしていましたが、体を壊してしまったために働き方を見直したとのこと。現在は日月休みの週休2日に。コロナ禍のタイミングもあり、技術、メニュー、おもてなしをブラッシュアップすることで、年間支払額が15万円以上のS客が41%を占めるまでになったとのこと。現在はほぼリピート客のみで年内の予約が埋まっている状態で、ワンオペ営業ながら月間総売上は200万円を下回ることはないそうです。
客単価1万円以下ながら、ワンオペで200万円以上の売り上げを叩き出しているのが東京都小金井市のアイリーです。今年3月、粕谷泰平代表は客単価9,553円×客数279名で266万円を売り上げています。これだけの客数をワンオペで回す秘訣は、2枠を基本とした予約の取り方。ある程度放置してもいい工程や、順番を入れ替えても問題ない工程を組み合わせながら効率的にサロンワークしています。それでも遅刻やドタキャンなどのトラブルでお客を待たせてしまうこともあるそうですが、そこは待たせても応援してくれる信頼関係が土台になっているとのこと。すべて一人で受け持つことで顧客との関係性がより深まるのもワンオペ営業のメリットだと感じました。
その他、今回の特集では女性向けの髪質改善サロンからメンズビューティサロンに業態変革することで急成長を遂げたワンオペサロンも取材しています。ぜひ、ワンオペサロンの出店やワンオペの働き方を考えるうえでの参考にしてみてください!
以上、現場からでした。
<今月のコンテンツ>
・【経営編】多様化するワンオペサロン
・ワンオペを軸とした長く働ける環境づくり(牛若丸/静岡県駿東郡)
・自立と多様性のためのワンオペ活用(ルプラボウ/愛知県豊橋市)
・【現場編】ワンオペ営業で生産性200万円を超える
・VIP客を増やす揺るぎないコンセプト(髪の治療院 山と空/福岡県北九州市)
・客数で200万円を超えるための三本柱(iRie/東京都小金井市)
・たった一人で起こした起死回生の業態変革(ヴァンサンク/大阪府大阪市)
- 執筆者
- 渡辺 淳司
「NEXT LEADER」編集長