「まちの保健室」をめざすサロンの今 社会貢献サロンの実例語る

「美容の価値を考える会」は5月20日、2025年度第1回目のシンポジウムを東京で開催した。今年度のテーマは「社会貢献サロンの実例で考える」。現地とオンラインのハイブリッド形式で実施され、医療と美容の接点や企業としてのCSRの可能性についてが語られた。
前半に登壇したのは、東京・渋谷のヘアサロン「RUALA(ルアラ)」の角 薫代表。自身が膠原病・多発性筋炎を患った経験から「更年期ヘルスケアアドバイザー」の資格を取得し、顧客の毛髪からホルモン値を測定する有料サービスを導入。女性顧客の健康不安を対話の中から拾い上げ、医療機関への橋渡しを行っている。また、スタッフ向けに理学療法士を招いたサロン内勉強会も実施しており、美容師自身の心身のケアにも目を向けている。

続いて登壇したのは「美容室をまちの保健室に」という構想を掲げる日本美容創生株式会社代表・金山宇伴氏。行政や地方自治体と連携し、サロンを地域医療の一端として機能させる“Beauty Venue”の普及を推進。現在までに大阪産業局など複数の支援を得て、全国各地で社会実装を広げている。

後半には、Lond(ロンド)の石田吉信共同代表が登壇。同社はCSRをサロン経営の中核に据え、スタッフの意識向上や地域・社会への貢献を実践してきた。今回は2名のゲストを迎えて活動の広がりを紹介。1人目は海洋問題の解決に取り組むNPO法人UMINARIの伊達ルーク代表で、社内勉強会などを通してLondスタッフに知見を伝えている。2人目は、西アフリカ・ブルキナファソでシアバター製造事業を展開する原口瑛子CEO。Londでは彼女のシアバターをヘアケア製品に採用するなど、グローバルな視点でのCSRを展開している。
登壇者それぞれが異なる立場から示した取り組みは、美容の現場から社会課題に向き合う姿勢を浮き彫りにした。