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美容師であり登山家! 植村直己冒険賞を受賞した稲葉香さんに話を聞いてみた!

美容師の傍ら、旅に出ながら登山を続けている稲葉さん

2021年4月5日、自然を相手に創造的な勇気ある行動をした人に贈られる「2020年度 植村直己冒険賞」を受賞しました。美容師として働きながら世界各地を旅し、近年はヒマラヤを中心に本格的に山を登っている稲葉香(いなばかおり)さんに話を伺ってきました!

 

稲葉香 [Dolpo-hair (ドルポヘア) / 大阪・大阪市]

いなばかおり/ 1973年5月1日、大阪府東大阪市生まれ。ベルェベル美容専門学校卒業後、大阪市内2店舗、フリーランスを経て、Dolpo-hairを独立。闘病しながらも世界各地を旅しながら山に出会い、その翌年には本格的にトレッキングをしてヒマラヤを登り始める。今年4月、2020年度植村直己冒険賞を受賞。現在は美容師の傍ら登山家として、多くのメディア、講演会等でも幅広く活躍している。 Dolpo-hair ホームページ

一度美容師を辞めていた?!

リウマチ発症が原因なのでしょうか?

はい、そうですね。私は18歳の時に手首と足首にリウマチが発症しました。当時は手首を動かすのがとにかくきつくて……。新卒で入社したサロンのアシスタントをしていた時もシャンプーはもちろん、長時間立っていることがとにかく苦しかったです。それが原因で、フリーランスとして美容師を再開する前はこの業界を一旦離れていました。

そうだったのですね。どうやって美容師を再開したのですか?

一度美容師を辞めてフリーランスとして再開するまでの間は、バイトでやりくりをしていました。でもやっぱり「職人になりたい」という気持ちはどうしても薄れず……。その時ちょうど美容師の先輩から「面貸しで働いてみない?」と話を持ち掛けられたんです。まだその当時は、面貸しで働くスタイルが珍しかったんですよね。リウマチによる手首の痛みがあったりで大手サロンで働くことはあきらめていましたが、その誘いをきっかけに自分のペースで働けるフリーランスというスタイルで美容師を再開しました。

リウマチによる症状ですが、現在は両手首と左足首の軟骨はなくなり、可動範囲は狭くなりましたが、ある程度骨が固まり痛みが軽減されました。でもこのようになるまで10年はかかりましたね。完治したわけではなく、寛解と再発の繰り返しで、今もまだ痛みがひどいときがあり、日常生活ですらしんどい日があります。

 

世界を回るきっかけと山との出会い

なぜ様々な国を訪れ、どの状況で山に出会ったのでしょうか?

私が旅で初めて訪れた場所が東南アジアで、ベトナムだったんですよ。その時に「両足のない少年」を見かけました。でも彼は懸命にスケートボードに乗って信号のない道路を渡ろうとするんです。そんな姿を見て、リウマチと闘病している自分と重なるものがあるように感じ、私も前向きになれました。ベトナムでのこのプラスになる経験があったから、もっと色々な国に行って、自分の経験値をさらに高めたいと考えました。そして、東南アジア・インド・ネパール・チベット・アラスカに行き、その旅の延長で山に出会いました。その時は28歳でしたね。

登山を本格的に始めた当時の状況を教えてください。

ベトナムを訪れた後に、夢枕獏さんの「神々の山嶺」を読みました。その影響があり、植村直己さんを知りました。アラスカに行ったその翌年の29歳の時にはネパールへ行き、植村直己さんを追いかけるように登山を開始しましたね。ちなみに、アラスカに訪れた時は山を見るだけでした。

そしてネパールに行き、ヒマラヤトレッキングをしているうちに、自分の意識も上へ目指して登っていくかのように変わっていきました。同時に自然環境に身を置いていたことで、身体の免疫力が高まり、登山ができるくらいにリウマチの症状も緩和されていきました。人間が持っている本能的な自然治癒力の凄さをとても実感しましたね。

 

美容師・登山家として…

登山は美容師としての自分にどんなことをもたらしていますか?

山に登る経験から、実生活でも心に留めておくべき大切なことを得たと思います。私は旅と山からすべてと言っていいほど人生観や考え方、哲学を教わりました。自分で感じることがまず大事であって、感じたら行動すること。この「気づき」は美容師でなくても、さまざまなシーンに通じることがあると思います。

美容師としてはイメージする力が今まで以上に身につきました。山では日々異なる状況下で、それをどうやって自分で回避するか創造する力が試されます。例えば、地図やコンパス、ロープをある程度使えるようになると山の世界が広がります。美容師でいうと、カットの展開図が描けたらどんなカットでもできるようになるのと同じですね。あとは想像力の世界でどうデザインしていくか。何事も「基本」って大事だなと感じましたね。

さらに、山はデザイン的にも面白いですよ。山、岩、石の形、花、木、葉の形や色。これらのデザインは人間にはつくれないですよね。自然の世界は本当に美しいです!

美容師と登山の共通点や相違点、どうとらえていますか?

私にとって美容師と登山は、どちらも突き詰めがいがあるジャンルですね。本格的に登山するようになって、日本とチベットには「美しさ」の違いがあると思いました。日本って「外見」を美しくすることがステータスじゃないですか。美容室もまさに「きれい」にしてもらうところですよね。

でもチベットは違って、私が通う西ネパールの中のチベット文化圏は、平均高度が4,000mになる位置に村が点在しており、自然環境が厳しい世界です。そこには、伝統を引き継ぎ日常に祈る文化があり、信じる力が人を強く美しくさせています。また、雄大な自然に囲まれたチベットの人々は、内面から湧き出る強い生命力のコントラストで美しく見える。日本人とは異なる「美しさ」だなと感じましたね。

最後に

稲葉香さんは美容師・登山家としての活動、どのように両立していますか?

私の場合は、お客さまが登山家としても活動していることを応援してくれているからこそ両立できていると思っています。ありがたいことにお客さまは私のことを信頼してくれています。そのおかげですね。

私は山でやりたいことが明確にあるんです。旅に出るスタイルとしてそれらを行うには最低でも3カ月は必要。その度に常連のお客さまが離れてしまう覚悟はしています。行くからには全力で活動して感謝の思いを表現する。実際に通ってくださるお客さまにはワンシーズン分のカットやカラー、メンテナンスをできないわけじゃないですか。それでもサロンに通い続けてくださるお客さまには本当に感謝しています。

登山家としての最終的な目標はなんでしょうか?

登山家としては、河口慧海師の歩いたチベット側のルートの再調査です。私はおもに西ネパール側を歩いてきました。過去に「河口慧海研究プロジェクト」というものがありまして、それをもう一度立ち上げ、残された未調査ラインを調査したいと考えています。

それが今までお世話になり、他界された先人の方々への感謝の思いであり、これらを次世代に残すというアーカイブを続けていきたいです。このプロジェクトは1人では決してできる世界ではないため、さまざまな方々と組んで計画を立てようと考えています。これは私の使命でもありますね。

美容師としてはいかがでしょうか?

美容師としては、お客さまが私のところに来て良かった、私に会って元気をもらいたい!と思って来てもらえるようなサロンにしたいですね。実際にお客さまを外に連れ出して、一緒にトレッキングをしたりしています。外に出て、太陽の光を浴びて、澄んだ空気を吸うことで心も身体も元気になれるんです。

それとあともう1つ。数年前から美容室に変化を起こしたいと思っていて、考えたのが「ヘナ」です。本格的に導入しようと思い、ワークショップに行った先でヘナの第一人者である方に出会いました。その方と出会ったことで美容師としてもビジョンができて、将来ネパールでもヘナのサロンができたら面白いなあと夢が一気に広がりました。実際にその準備として、私自身もヘナのワークショップを始めました。

貴重なお話ありがとうございました。最後に美容師の方々に向けてメッセージをお願いします!

登山も美容師もそうですが、どんなことでも好きなことじゃないと続かないと思います! 私も実際にそうでしたから。それと「基本」は大事だと思います。どんなことにも共通しますが、美容師として技術でも接客でも基本があってこそだと思いますね。

 

 

ということで、稲葉さんから貴重なお話を伺えました。美容師として働きながら、本格的に登山をし、植村直己冒険賞という名誉ある賞を受賞し、順風満帆な人生だと思っていました。ですが実際には18歳でリウマチを発症し、それを機にとても苦しい思いをされたとのこと。しかし、旅での経験と、その延長で山に出会い ‘‘私は私でいい‘‘ と思うようになって、行動・考えが変わった稲葉さん。実際にお話を伺い、稲葉さんは生命力のパワーがものすごく強い方だと感じました。取材を終えた後、編集部の私も元気をもらえました。ありがとうございました!!

 

 

月刊BOB編集部

AUTHOR /月刊BOB編集部

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