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最強の“変人”研究者を探せ! VOL.1

 

いつの時代も変わり者が歴史を変える。アインシュタインもピカソもダリもかつては「変人」と呼ばれていた。この美容業界に潜む「変人・研究者」を追う連載企画をスタート。あなたのサロンにあるその商品も、実は“変人研究者”の絶え間ない努力と血と汗と涙によって生まれたものかもしれない……。

 

「iPS細胞ができた!」叫んだ学生時代

2007年にアメリカの科学雑誌『Cell(セル)』で発表された「iPS細胞」に関する京都大学・山中伸弥教授の論文を読み「これだ!」と叫んだ男子大学生がいた。現在、ルベル事業部 化粧品研究開発部 第二研究所に勤める近藤信次だ。母が網膜剥離の手術を受け、再生医療※1に興味を持っているタイミングだった。それから約2年後、大学院に進んだ彼はiPS細胞をタンパク質から作成するために日夜研究に明け暮れていた。
「iPS細胞をつくるためには、当時1カ月くらいかかると言われていました。iPS細胞ができたというのは、見た目ですぐに分かるんですよ。毎日顕微鏡をのぞき、培養しているシャーレを掃除してあげたり、えさとなる培養液を与えたりして過ごしていました」

そんなある日、今振り返っても人生で一番うれしかったという大事件が起きる。“iPS細胞らしきもの”が覗いた先に見えたのだ。
「大興奮して、すぐに教授のところへ報告に行きました。今はiPS細胞をいかに活用するかが重要視されていますが、当時はいかにしてiPS細胞をつくるかという段階だったんですね。しかもタンパク質を使ってiPS細胞をつくった人は世界で誰もいなかったんです」

しかし夢は一瞬で打ち砕かれた。できあがったものはiPS細胞ではなく、カビだったのだ。

※1「再生医療」とは、機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器に対して、細胞を積極的に利用して、その機能の再生をはかるもの(日本再生医療学会HPより抜粋)

 

趣味はゾンビ映画鑑賞と洋服、スタイリング剤集め

死んでいるけれど生きている、ゾンビは髪と同じだ! と言われてピンとくるのは美容業界人でもごく一部かもしれない。昔から宇宙やオバケが好きなSF少年だった近藤さんは、ゾンビ映画を観ることが趣味だ。
「ゾンビで一番タチが悪いのは、足が速くて頭がいいゾンビなんですよ」
様々な映画に出てくるゾンビをマトリクス分析しているそうで、その結論がこれだ。

「髪は死んだ細胞であり、死んでいるから直せないという定説は各社が開発した『プレックス成分』により現在変わりつつあります。ゾンビと同じで、髪は死んでいるんですが生きているんですよね」
そう話しながら笑う近藤さんの横顔は、まさに探し求めていた“変人研究者”そのものだった。

近藤さんの変人度を知るうえで欠かせない趣味をもう2つほど紹介したい。それは洋服とスタイリング剤集めだ。洋服は気に入ったものに出会えば多少無理を押してでも購入する。過去には休日用にメゾンマルジェラのライダース(25万円)を購入した。スタイリング剤集めは大学時代からの趣味で、いろいろなサロンを渡り歩いてはおすすめされたスタイリング剤を購入し、使用感を確かめていた。お願いされてもいないのに、友人たちに合ったスタイリング剤を紹介して回ることも日常茶飯事だったという。

そんな彼にとって今の仕事が天職であることは間違いないが、就職活動の際には様々な葛藤があったという。

「就職活動をしている時、自分は何をして生きていたいか? を考え続けていました。その時、好きなことを仕事にすることが一番ワクワクしたんです。やりがいを感じたMR(医療情報担当者)の仕事で製薬会社から内定をもらっていましたが、日ごろからワクワクできることを自分自身でも大切にしていたこと、OB訪問で出会った先輩もすごく魅力的な人で、タカラベルモントへの入社を決めました」

近藤さん私物のスタイリング剤BOX

 

フロマージュプリンから着想するスタイリング剤!?

入社後、ヘアカラー剤『MATERIA(マテリア)』のリニューアル、スタイリング剤『TRIE(トリエ)』リニューアル、スタイリング剤『Moii(モイ)』ブランドのたちあげ、現在は『THEÓ(ジオ)』スタイリング剤主担当、『THEÓ(ジオ)』パーマ主担当を務めている。

研究者という肩書きから、研究室で顕微鏡に向かう毎日を過ごしているのかと思いきや“変人研究者”の場合はそうでもないらしい。

「スーパーやコンビニに行くことが多いですね。実は、スタイリング剤に含まれている『増粘剤』は、食品に使われているものと案外変わらないんですよ。もちろん、研究所で研究途中のサンプルをウイッグで試したり、自分の頭で試したりもしていますが。実は、僕は気に入ったスタイリング剤に対して噛む、舐める、テイスティングして分析しないと気がすまない。これによって実は保湿成分とかも予測できたりするんです。僕の中では、スーパーが主戦場と言っても過言ではないですね」

「マカロンやババロア、高級バター、最近はフロマージュプリンのあのフワフワ感をみて、これをスタイリング剤にしたい! と思ったところです。パッケージのオシャレさも大切ですが、今スタイリング剤に求められているのは新しい“かわいい”だし、具体的には新しい触感や質感、剤形だと個人的には考えています」

タカラベルモント社の研究所は滋賀県の山奥にあるが、そこまで京都から1時間半かけて通っている理由も、自分の足で新しい情報を取りに行くことに価値を見出しているからだ。
「僕が一番大切にしているのは、美容師さんの生の声です。美容師さんに“かわいい”と言ってもらった商品は、市場にだしても反響が大きいのは過去の経験から分かっていること。京都市内に住んでいろんな美容室に行くことで、競合他社メーカーや自社のスタイリング剤の評判が自然と入ってきます。最近も『やられたー!』と思った他社の新商品があったのですが……そういう気持ちこそ、負けてられないと、次の新しい商品開発・研究につながりますね」

 

世界で類をみない泡状のパーマ剤は、まさに血と汗と涙の結晶

そんな近藤さんの直近の仕事は、2020年10月に発売された『THEÓ(ジオ)パーマ』だ。
大好きなスタイリング剤のような剤形を、パーマで表現したら面白いのではないか? 思いつきから始まったという開発。

「『ジオパーマ』の特徴は、①しなやかな弾力系のあるカールの質感でありながら、しっかりとかかる。②圧倒的に短い施術時間(1剤塗布から水洗・アフタートリートメントまで30分)。③泡状のパーマ剤だからこそ実現できた、美容師とお客さまの快適なパーマ施術体験です。美容師さんからはターバンもしなくてよいので、サロンワークのタイムパフォーマンスがあがったという声も数多くいただき、本当に血を流す思いで開発してよかったと思っています……本当に大変だったので……」

周囲からも「アイデアはいいが、商品化は限りなく不可能に近い」と言われていた、泡状のパーマ剤『ジオパーマ』。しかし、圧倒的な特徴と使い勝手の良さを持つ泡状のパーマ剤は絶対に市場から求められているはずだ! という自信だけを頼りに、約2年半の間真正面から向き合ってきた。

「泡はモコモコしているため、毛髪に滞留し頭皮に付着するリスクは少ないです。しかしモコモコ泡は、薬剤が毛髪に浸透しにくく、今度は肝心のパーマがかからない。つまり、泡だけれども適度に泡消えしなけらばならなかったんです。大失敗を重ねる中で、それでもめげずに検証してくれた仲間がいてくれたことが支えになりました。失敗しているのにワクワクする感覚、僕が学生時代から大切にしていたことを今も感じられていることが幸せですね。アイデアを発想し、そのアイデアを実現するしんどさとプレッシャーに押しつぶされそうになる時もあるのですが、持ち前の負けん気の強さでこれからも頑張ります」

ゾンビ(のような髪)とスタイリング剤と……大好きなものに翻弄された、近藤さんの毎日は続く。

 

『THEÓ(ジオ)パーマ』の泡

近藤信次/1986年6月28日生まれ、高知県出身。岡山大学工学部、岡山大学大学院 自然科学研究科 物質生命工学専攻卒業後、タカラベルモント(株)入社。現在、ルベル事業部 化粧品研究開発部 第二研究所勤務。

月刊BOB編集部

AUTHOR /月刊BOB編集部

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