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美容師が知っておきたい、エシカル、サステナブルのことまとめ

 

イギリス・ロンドンと日本をベースに活動するコスチュームデザイナー・環境アーティストである谷 公美子さんに、今美容師が知っておくべき環境問題に関する知識と言葉を取材しました。「サステナブル」「エシカル」という言葉はよく耳にするようになりましたが、実際そのような洋服や食べ物、製品を選べている人は多くないでしょう。ただし、地球温暖化による気候変動といえば身近に感じている美容師さんも多いはずです。「まずは環境問題は自分にも関係があることだと興味を持つこと。そこから自分自身で調べ、行動を少し変えることが大切です」と谷さんは最初に教えてくれました。

 

フェアトレード、エシカル、サステナブルの違いって!?

まずは、最近ぐっと耳にすることが増えた3つの言葉の違いを教えてもらいました。

「フェアトレード」とは、社会的・経済的な立場が弱い人々に仕事の機会をつくりだし、公正な対価を支払い継続的に促すこと。日本でも、フェアトレードのチョコレートやコーヒーなどが販売されています。

「エシカル」は、「倫理的な」という意味を持つ英語で、フェアトレード商品を選ぶことも含まれます。「エシカル消費」という単語で使われることが多く、その場合「人と社会、地球環境、地域のことを考慮して作られたモノを購入・消費する」ことを指します。例えばオーガニックコットンはエシカルな商品ですが、昨日食べた魚がエシカルな食品だったかどうかは、自分自身でしっかりと調べないと分かりません。また、オーガニックコットンも無駄に大量生産をしてしまっていたら、それは環境にいいとは言えません。これもまた個人で調べられる限度があり、どのように商品を選択するか難しいと言われますが、最近は情報も増え買い物しやすくなりつつあります。

「サステナブル」は、フェアトレードとエシカルなどとも深く関連する言葉で「持続可能な」という意味です。地球の限りある資源を大切に使うことで未来の子供たちに残す、これからも平和に暮らしていけるようにするためなど「サステナブルな社会」を目指していこうというのが世界の主流になっています。そのための具体的な行動目標が2015年に国連によって採択されたのが2030年までの達成目標「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」=「持続可能な開発目標」なのです。

 

美容師が知っておきたい、環境問題に関する言葉

「フェアトレード」「エシカル」「サステナブル」の違いをおさえたところで、さらに知っておきたい言葉を教えてもらいました。

「アップサイクル」と「ダウンサイクル」
「アップサイクル」……いらなくなった物を、元の形状を活かしながら価値があがる新しい物にして再利用すること。形状を活かすため、原料に戻すリサイクルのように新たなエネルギーを必要としないのでよりサステナブルだとされています。
「ダウンサイクル」……いらなくなった物を、元の価値よりも低い活用方法で再利用すること。例えば、不要になった洋服を雑巾として活用するなど。

 

「グリーンウォッシュ」
上辺だけで環境問題に取り組んでいる企業などを揶揄する言葉。今や、世界の大企業は環境問題解決に取り組み環境に配慮しなければ、ビジネス的にも成り立っていかないと言われています。しかし、消費者からのイメージアップだけを狙い上辺だけで環境にやさしい会社を取り繕う場合が世界的に多くみられます。

「リユース」「リサイクル」
「リユース」……元の形状を変えずに再利用すること。そうすることで、生産自体を減らすことができ環境にもよいとされています。
「リサイクル」……原料に一度戻すなどして、元の形状を変えて再利用すること。元の形状に戻す際に新たなエネルギーが必要となるため、本当に環境にいいのか? と指摘されることが増えてきました。

「SDGs」(エス・ディー・ジーズ)
Sustainable Development Goals。2015年に国連により採択された「持続可能な開発目標」。2030年までに達成すべき大きな17の目標についてまとめられています。日本でも2019年ごろから大企業を中心に「SDGs」研修が活発に行われており、「誰1人取り残さない」世界という理念を掲げ、今後2030年に向けてより一層企業の役割として目標達成が求められることになるでしょう。

 

谷さんが気になる、美容室でもできるサステナブルな行動とは?

美容室でも今後実施できそうなサステナブルな行動について聞きました。

photo : Kaori Ito(THE VOICE MANAGEMENT)

①給水スポットの設置
カフェやレストラン、公園でもマイボトル用の給水スポットを設置しているところが増えてきました。給水スポットアプリ『mymizu』や最近『無印』でも店内に給水スポットができたそう。マイボトルはペットボトルの生産量を減らすために有効です。美容室でも給水スポットの設置を検討し、お客さまとともに環境問題に取り組むことをおすすめしたいです。

②紙の雑誌から電子版の雑誌へ切り替える
すでに取り組まれている美容室も多いと思いますが、これもサステナブルな行動の1つだと思います。また、最近日本のファッション誌でも環境問題を取り扱うことが増えていますので、ぜひ読んでもらいたいですね。

③環境に配慮したシャンプーやトリートメントを販売
プラスチックの消費量をおさえるためにリフィルシャンプーの最大活用を考えるのもいいでしょう。世界では、環境に配慮されたサステナブルな固形シャンプーやトリートメントをお客さま自身が持ち込める美容室もあるようです。

④シャンプーの量り売り
先日、私もお世話になっている環境団体主催の集まりで、ある美容室のCSR担当の方にお会いしました。その方のお店では、すでにオリジナルシャンプーの量り売りをされているそう! ぜひ広がって欲しい活動だと思いました。

⑤再生可能エネルギーへ電気契約を変える
再生可能エネルギーとは、枯渇する恐れのない太陽光や風力、地熱発電のことです。電力会社の契約を変えることですぐに取り組めるサステナブルな行動の1つです。最近は契約がオンラインで簡単にできる会社も増えています。

 

谷さんが行っている『アップサイクル』活動

2004年に渡英し、現在はロンドンと東京をベースに置く、コスチュームデザイナー・環境アーティストの谷さんの活動についても詳しく聞きました。世界で2番目の環境汚染産業とされるファッション業界だからこそ、アップサイクル活動に積極的に取り組む必要があり、少しでも自身のコレクションをキッカケに興味を持ってくれる人が増えればと活動を続けているそうです。

 

キッカケは、イギリスの新聞の無料化

谷さんがアップサイクルに興味を持ったのは、ロンドンの芸術大学である「セントラル・セント・マーチンズ」を卒業する際のコレクションだったといいます。2007年イギリスでは新聞が無料になり、道端に多くの新聞紙が捨てられている状況になりました。在学中から友人らとシアター(演劇)プロダクションをスタートさせ衣装を担当していたこともあり、そこから発想したのが、新聞を折ったり縫ったりして仕上げるアップサイクルドレス。この作品が後の谷さんの活動や仕事につながったといいます。

 

材料集めから始まる「アップサイクル・ドレス」

卒業後、コスチューム制作会社に入社して働きながらも、フリーランスとしていろいろなゴミを「アップサイクル」した作品の展示や発表を続けます。谷さんの発想は、まずゴミである材料を集めるところから。ゴミからアイデアを膨らませ、どういうデザインにするのかを決めていきます。一番の誉め言葉は作品を見た人が「ゴミに見えない!」といってくれることだと話す谷さんですが、コスチューム衣装制作の知識と技術があるからこそ、美しく見えるオートクチュールドレスへとアップサイクルできているのは間違いありません。

 

環境先進国ドイツでのファッションショー

2015年にはドイツのベルリンにて初のファッションショーを開催、2018年まで毎年コレクションを発表しました。ドイツは何十年も前からペットボトルの回収システムが根付いている環境先進国(販売価格にデポジットとして約30円が含まれており、回収場所に持っていくと30円が戻ってくる)。また使用エネルギーのうち再生可能エネルギーが42%のシェアを占めているというから驚かされます。谷さんのファッションショーには、コストコでも販売されているドイツの『リンツチョコレート』がマテリアルスポンサーにつき、工場で使用されずゴミになっていたパッケージをドレスにアップサイクルしたコレクションも発表しました。

 

「世界の人々が今の生活を改めないと10年後には地球が限界を迎えると長年言われていましたが、今やリミットが7年まで縮まってしまいました。環境問題はとても差し迫った喫緊の課題でもあります。ここ数年は日本でも秋刀魚が食べられなかったですよね、それも地球温暖化が原因のひとつだといわれています。何かを大きく変えなければならないのは間違いないのですが、それは1人の小さな行動の変化から始まると思っています。私自身はアートの分野から環境問題を表現することで、環境問題について興味を持ってもらう、少しでも環境に関するコミュニケーションが活発になればと思い活動をしています。最後に環境問題に少しでも興味がある方は「SDGs」などのワードから検索すると、facebookのコミュニティやLINEのグループがいろいろありますので、興味がある方はぜひ検索してみてくださいね! 私もコミュニティに参加して日々情報をシェアさせてもらっています。まず興味を持つこと、自分で調べて知ること、そこから買い物の仕方や価値観が少しずつ変わると思います。アップサイクルドレスがキッカケになれば幸いです!」

谷 公美子(タニ クミコ)/Re-Cycle-Style代表/コスチュームデザイナー/環境アーティスト
Central Saint Martins College (Fashion design with marketing )卒業、カイリー・ ミノーグやポール・マッカートニーの衣装製作やパイレーツ・オブ・カリビアンやアラジンなどのディズニー映画、ハリーポッターのシアタープロダクションなどの製作チーム等に参加し経験を積む。再生可能エネルギーや持続可能な社会に興味をもち、イギリス、日本を拠点にアップサイクル=リサイクル可能な材料を使用して衣装を制作している。イギリスやドイツで行われるファッションウィーク・サステナブル部門で発表を続ける。2015 ブライトンファッションウィーク(イギリス)、2015 エシカルファッションカレッジ(日本)、2015-2018 Berlin Alternative Fashion week (ドイツ)、2017-2018 イギリスにある太陽光、風力発電所Westmill Sustainable Energy Trust (www.weset.org)のイベント参加。またロンドンで今話題になっている新しいスタイルのシアター”Secret Cinema” やミュージックビデオなどの衣装の制作・作品提供など様々な企業、アーティストや環境団体などとコラボレートしながら表現の幅を広げている。2018−2019国際環境NGOグリーンピースジャパンとアーティストコラボレーション、2019アースディ東京メインステージでの作品発表、環境アートのワークショップ開催、ベストオブミス東京大会への衣装提供など。www.re-cycle-style.com

月刊BOB編集部

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